VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#972 『グリーシュマ(夏)』(山西利治/メールプラーナ/PS)

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ガストがおくるシミュレーション・メールプラーナより、

西利治作曲、『グリーシュマ(夏)』。夏季に流れます。

ファルカタの系譜を継ぐガスト初期のシミュレーションゲームにあたる本作。インド神話をモチーフに、大草原の覇権をめぐって遊牧民の群れを率いることになる。中央アジアの世界観で繰り広げられる雄大な作風が特徴で、カードゲーム風の手札のなかからグラーマ(遊牧民の一団、いわゆるパーティ)の人数分だけ探索や戦闘、計略などのコマンドを選択して行動し、他の勢力とときには争い、ときには同盟を組みながら、自らのグラーマを中心に草原全体を繁栄させていく。登場する108人の戦士たちそれぞれに相関関係が用意されていて、戦士同士の掛け合いを楽しむこともできる。システムが特殊ですこしとっつきにくかったり、やや単調であまり変わり映えしないゲーム性だったりするなどの面はあるが、一風変わった題材を扱っているだけに非常に独特な味わい深さがある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは山西利治氏。当時ガストに所属していた作曲家で、ファルカタに引き続き単独で作曲を手がけている。本作では遊牧民の暮らしを彩るにあたって、切なくも壮大な民族音楽調の楽曲が揃っていて、戦闘曲に関しては派手な演出に合わせてファルカタ同様に激しめのシンセやロックで魅せてくれる。サウンドトラックは長らく存在しなかったが、2015年にデジタル音源が配信されたほか、ガスト20周年記念CDボックスのなかに収録されている。

春・夏・雨季・秋・冬・涼季の6種類の季節のうち、夏の間に流れるのがこの曲である。シロフォンの音色に包み込むようなオーケストラが寄り添う独特なイントロから始まり、開始から20秒あたりでシタールの音階がさながら通り雨のように流れ落ちていく。どこか湿り気のある落ち着いた曲調が印象的で、42秒あたりで一旦音が止むと、続いて弦の伴奏とともにシタールが華やかに奏でられる。時折小休止を挟みつつも、1分25秒頃まではマラカスが、それ以降はアゴゴベルの金属音が後ろのほうでリズミカルに拍を刻み、両方が揃う2分11秒からはさらにもう一捻り即興風の演奏で盛り上げる。不思議と聴き心地の良い音色によって越夏する遊牧民たちの生き様を表現した一曲である。

昨日で発売から25周年ですね(※記事執筆時)。グリーシュマ(ग्रीष्म)はサンスクリット語ヒンディー語などで「夏」だそうです。曲全体に異国情緒が染みていて素敵です。