VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1014 『chaos』(石川鉄男/I.Q REMIX+/PS2)

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SCEがおくるパズルゲーム・I.Qより、

石川鉄男作曲、REMIX+の『chaos』。ステージ「CHAOS」で流れます。

奥から手前へと押し寄せるキューブを消していくパズルゲーム・I.Qシリーズの3作目にあたる本作。ゲームオーバーになるまでエンドレスに挑戦し続けるメインモードと、100問を順番に解いていく100 ATTACKモードの二種類の遊び方で迫りくるキューブに対処することになる。フィールド上でキューブに潰されないよう立ち回りながら、黒で示されたフォービドゥンキューブ(FQ)以外を手際よく消去していく基本的なゲーム性はそのままに、ハードの移行に伴ってPS2の描画性能を活かしたリアルタイムエフェクトが背景に表示されるようになった。通常の問題に加えて、FQの迷路を切り抜けるForbidden Mazeと、FQの壁をすり抜けるForbidden Wallの二つの特殊ルールが導入された点が特徴である。シンプルでストイックな作風は健在だが、視覚効果が目立つ意欲作となっている。

本作の音楽を担当するのは石川鉄男氏。様々なアーティストと協業するシンセサイザープログラマー兼音楽プロデューサーである。ゲーム音楽方面ではポポロクロイス物語シリーズの作曲に携わったことがある。前二作では服部隆之氏による映画音楽然とした壮大なオーケストラサウンドが中心だったが、本作ではがらりと音楽性を変え、テクノやジャングル、エクスペリメンタルなど、前衛的で野心的な楽曲が揃っている。サウンドトラックは発売直後に登場した。

ステージ「CHAOS」で流れるのがこの曲である。1周5面構成でステージの順番はランダムのため、何番目のステージとして登場するかはその時々だが、このステージだけ問題をクリアした際のボイス(PERFECT・EXCELLENTなど)が通常の英語発音ではなくカタカナ読みになる謎仕様がある。曲冒頭からミニマルなリズムパターンと列車の走行音で斬新な印象を植え付け、加工された人声や汽笛の音、さりげなく遠鳴りするハーモニカなどが相次いで加わることで珍妙な雰囲気に磨きをかける。25秒からは跳ね回るピアノの音色も入り、1分前後には狂ったような速弾きを披露する。早回しされたビデオを彷彿させる笑い声や突然響く荒いギター、踏切の警報音など、雑多な音を継ぎはぎして形成された混迷を極めた曲調が、一周回って統率の取れた響きを生み出す。曲名通りとことんカオスな一曲である。

心地良いカオスっぷりですね。