VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1013 『オープニング』(幡谷尚史/ハイブリッド・フロント/MD)

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セガがおくるサイバーパンクSFシミュレーション・ハイブリッドフロントより、

幡谷尚史作曲、『オープニング』。オープニングデモで流れます。

ウォーシミュレーションの大戦略シリーズの系譜を辿るメガドライブのオリジナル作品にあたる本作。度重なる紛争で国家が形骸化し地球が荒廃した26世紀を舞台に、軌道企業国家連合・コクーンが実権を握るなか、当代の物流を支える武装輸送組織・運び屋のチームが入手したディスクをめぐり、複数の勢力の思惑が絡み合う戦いの幕が開けることになる。きな臭くて重厚なハードSFの世界観が特徴で、シミュレーションパートでは勝利条件に従って各マップで初期配置された部隊を指揮していく(追加でユニットを生産する要素などはなく、リソースが限られる)。幕間のシーンでは、日本SF界の巨匠・野田昌宏氏が監修したシナリオを、さながら硬派なSF小説を読み進めるような感覚で楽しめる。シミュレーションとしての遊び応えも、読み物としての歯応えもある仕上がりとなっている。後にメガドライブミニに収録された。

本作の音楽を担当するのはHATAこと幡谷尚史氏とSHIRAKOこと白津順子氏。スタッフロールには表記がないが、小河幸男氏も携わっている。いずれも当時セガに所属していた(幡谷氏は現在も所属している)作曲家である。このうち幡谷氏は本作の音楽の総合監修や効果音も手がけている。濃密でハードボイルドな作風にあわせて、本作では粘り強くて緊張感のあるデジタルサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、アドバンスド大戦略のCDに本作の音源があわせて収録されている。

オープニングデモで流れるのがこの曲である。本作の舞台設定を年表形式で物語っていく映像を、淡々としつつも臨場感のある曲調で彩る。26世紀に至るまでの世界情勢が矢継ぎ早に明かされるなか、字幕を目で追う行為を手助けするかのように、主張しすぎず、かといって物足りなさも感じさせない、適度に耳馴染みする旋律が奏でられる。周期的に拍を刻むパーカッションに、トランペットを思わせる丸みのある音色や、高音が印象的な電子音が寄り添うことで、冷静ながらも独特な疾走感を醸す。一連のデモが終わる頃にタイトル名が機械音声で呟かれると、以降はキーを変えてテンポが上昇し、痺れるようなスリルを生み出す。これから始まる運び屋たちの物語への期待感を最大限に高めてくれる一曲である。

いつ見てもこのオープニングは秀逸ですね。