VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1560 『氷結公園』(幡谷尚史/ブレイザードライブ/NDS)

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岸本聖史著の同名の漫画と並行展開する、

セガがおくるMYSTICKERバトルRPGブレイザードライブより、

幡谷尚史作曲、『氷結公園』。氷結公園で流れます。

同名の漫画とのメディアミックス作品としてDS向けに登場した本作。近未来のトウキョウを舞台に、ミスティッカーを呼ばれるエネルギーを秘めたステッカーを力の源とするブレイザーの青年・シロウは、同じくブレイザーの能力を悪用する輩に対抗するガーディアンの一員として任務を請け負うことになる。ミッションクリア形式で進めていく対戦型カードバトルRPGで、漫画のライバルキャラをゲームの主人公に据えている。戦闘は5系統6属性・計300種類以上のミスティッカーを腕に貼って2対2で戦う方式で、行動順が入り乱れるアクティブ進行を採用している。ミスティッカーは攻撃、防御、補助、妨害など種類が豊富で取れる行動の幅が広く、最大24枚をストレージ(デッキ)に編成して左右の腕に各4枚ずつ貼り、適宜カウンターや味方との連携などの特殊行動を組み合わせながら戦略的に立ち回ることができる。一戦一戦にウェイトを置いて演出含めてやや長丁場だが、戦闘の面白さとミスティッカー収集・編成の醍醐味に注力している。グラフィックやアニメーションも充実していてDS水準で綺麗さがあり、物語は一本調子ながらもそつなくまとめられている。総じて濃密な駆け引きを楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは澤田朋伯氏と幡谷尚史氏。いずれもセガに所属している作曲家で、90年代前半から長く在籍しているベテランである。本作では近未来のアーバンでスタイリッシュなバトルものの作風に見合うように、音楽はシンセやエレキギターを利かせた鮮やかなテクノ系を中心としている。サイバー感のある理知的な曲調が目立つが、ヒップホップ風の軽快なものやアコースティックに寄った穏やかなものもあり、丁寧かつ洗練されたサウンドを堪能することができる。サウンドトラックには主題歌やそのインスト版も含めて収録されている。

氷結公園で流れるのがこの曲である。トウキョウ第Ⅷ区に位置する博物館併設の公園で、現実の地理と照らし合わせると北区の飛鳥山公園をモチーフにしている。環境破壊対策で都市を保存する研究の一環で氷漬けにされていて、園内はもちろん博物館の中も凍っている。そうした一種異様で徹底した景観に沿うように、この曲は冷たく謎めいた雰囲気が漂っている。煌びやかだが尖った響きを帯びたシンセやタンバリンを軸に、6~7秒などでみられる古式ゆかしいハープシコードの音色、一転して15秒で挿入されるデジタルなエフェクトを見事に織り交ぜてユニークな聴き心地を生み出している。32~35秒でディスコ風のクールなフレーズを挟んだ後、サビはあえて捻らず直球で聴きやすいメロディーを奏でることで、氷に閉ざされたという閉塞的なイメージはなく、少々変則的だがポジティブなニュアンスを保っている。ミステリアスであると同時にキャッチーでもある秀逸な一曲である。

飛鳥山公園といえば桜が有名ですが、その前提の印象を反転してくる感じが良いですね。48~51秒あたりが若干和風っぽく聴こえるのは名残なのかな?