VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1122 『Viper』(吉田沙織/LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶/PS4・PS5・XOne・XX|S)

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セガがおくるリーガルサスペンスアクション・ロストジャッジメントより、

吉田沙織作曲、『Viper』。相馬和樹との戦闘で流れます。

俳優の木村拓哉氏が主演を務め、龍が如くスタジオが開発したジャッジアイズの続編として登場した本作。元弁護士の探偵・八神隆之は、新しく探偵業を始めた友人を訪ねてやってきた横浜の伊勢崎異人町で、私立高校のイジメの調査を進めるうちに、やがて因縁渦巻く復讐劇に巻き込まれることになる。前作は極道や裏社会を色濃く描いていたが、本作ではそれらの要素を部分的に受け継ぎつつ、より身近なテーマとして学校でのイジメ、復讐、それぞれの正義などを中心に扱っている。尾行や変装といった調査アクションは健在で、新たにアクロバティックな身のこなしで道なき道を進むアスレチックや、隠密行動をおこなうスティールなどが追加された。また、高校が舞台の一つであることから、生徒らと交流して謎を追うユースドラマという寄り道要素があり、シナリオもミニゲームも本編に引けを取らぬ充実ぶりを誇る。戦闘面では前作の2種類のバトルスタイルに加え、受け流しと反撃を得意とする流スタイルが新登場し、敵の数や動きに応じてさらに臨機応変な戦い方をできるようになった。法で裁き切れない問題に正面から切り込んだ濃厚かつ挑戦的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは青木千紘氏、岡村諭志氏、甲斐孝博氏、庄司英徳氏、花田啓太郎氏、福田有理氏、吉田沙織氏、83key矢崎俊輔)氏、Hyd Lunch(松崎泰之氏と渡辺博昭氏のデュオ)。83key氏とHyd Lunchを除き、いずれもセガ所属の作曲家である。前作から引き続き作曲している者が大半だが、岡村氏、甲斐氏、花田氏は初参加である(甲斐氏と花田氏は龍が如くシリーズでの作曲経験がある)。本作では物語を盛り上げる熱く尖ったサウンドが多く収録されていて、ロックやテクノのほかにも、オーケストラやダンスミュージックなど幅広く取り揃えられている。また、各ユースドラマに沿ったBGMも多数用意されている。サウンドトラックについては、前作と合わせて一部楽曲を厳選して収録したものと、本作単体で主題歌を除き4枚組で収録したものが存在する。

神室町の半グレ集団・RKのリーダーである相馬和樹との戦闘で流れるのがこの曲である。東城会の元組員にして端正な佇まいの切れ者で、半グレたちをまとめ上げて強固な組織をつくった実力者である。理由の如何によって身内にも一般人相手にも躊躇なく暴力を振るう冷血さが特徴である。そうした難敵との戦いを彩るにあたって、手始めにゴシック風のイントロでじわじわと勢いを蓄える。16秒頃でストリングスが加わり、続いてパーカッションが本格参戦すると、エレガントであると同時にエキセントリックでもある印象を与える。特に47秒以降はストリングスが短い間隔で高音を連続で奏でることで、ますます身の毛がよだつような不気味さを感じさせる。1分17~34秒の間奏で一旦勢いを抑えてミステリアスな雰囲気を漂わせた後、サビでは弦が金切り声を上げるかのような急激な高音を鳴らすことによって、うまくメリハリをつけて恐怖心を煽る。いかなる手を使ってでも己が正義を貫こうとする冷徹な凶手としての彼の性質をよく捉えた、独特な歪みと鋭さを孕んだ一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。相馬はナイフやアイスピックなどの刃物使いですが、まさにナイフのように鋭く、純粋な恐ろしさに満ちた曲に仕上がってますね。