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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1202 『運命という名の歯車』(Falcom Sound Team jdk/英雄伝説 創の軌跡/PS4)

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日本ファルコムがおくるストーリーRPG英雄伝説より、

Falcom Sound Team jdk作曲、創の軌跡の『運命という名の歯車』。

最終章のクロスベルなどで流れます。

英雄伝説の軌跡シリーズのうち、空の軌跡から続く一連の物語群の完結作にあたる本作。英雄たちの活躍により件の厄災を乗り越えたゼムリア大陸を舞台に、ロイドはクロスベル再独立に向けて、リィンは突如誘拐された皇子夫妻の行方を追って、謎の仮面の男・《C》は大金で雇った元殺し屋の少年少女らと暗躍しながら、やがて数奇な運命に立ち向かうことになる。旧作主人公2人+正体を隠した新主人公から成るトリプル主人公制で、三者の視点を切り替えて進めるクロスストーリーシステムを採用している。ロイドおよびリィンルートは旧キャラ勢揃いで、《C》ルートは新キャラ中心で従来とは切り口の異なるアンチヒーロー的な作風を楽しめる。戦闘面では50人以上がプレイアブルで、最大10人で協力技を放つヴァリアントレイジというコマンドが新登場した。自由な編成で広大なダンジョンに挑む真・夢幻回廊、キャラ同士の掛け合いを見られるエピソード、多彩なミニゲームなど、各種やり込み要素も充実している。個々のルートはやや駆け足で、あらすじを確認する機能こそあるものの旧作の前提知識がないと話を追いづらいが、これまで紡がれてきた物語にしっかりと決着をつける集大成らしい仕上がりとなっている。後にスイッチとSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのはFalcom Sound Team jdk。具体的な内訳は宇仁菅孝宏氏、園田隼人氏、古口駿太郎氏、および外部コンポーザーの真我光生氏と神藤由東大氏である。本作がデビュー作となる当時新人の古口氏や、空SCEvo以降の参戦で比較的シリーズの作曲経験が浅い真我氏を除き、いずれも軌跡シリーズには10年以上携わっているベテランである。本作では過去作からの流用やアレンジ含め、大量の楽曲が収録されていて、物語の終点を意識させるようなシリアスな曲調や、シリーズの例に漏れず昂揚感をそそるような情熱的な曲調が揃っている。サウンドトラックについては、初回特典で一部楽曲を収録したものと、3枚組で全曲収録したものが存在する。

最終章のクロスベル市内と、一部の重要なイベントシーンで流れるのがこの曲である。その曲調はひどく物憂げで、街で流れる曲といって一般的に思い描くような雰囲気とは明らかに異なる(通常時のクロスベルで流れるのは『Crossbell Nostalgia』で、そちらは郷愁を誘いつつも前向きな曲調である)。ハープや鐘による謎めいたイントロで始まり、続いて儚げなピアノや包み込むようなシンセが加わると、取り返しのつかないところまで来てしまった感覚を強く印象付ける。1分手前で流れが変わり、鉄琴やハープ、フルートを交えて徐々に勢いを蓄えると、1分24秒からのサビで満を持して本作のメインテーマと言える『The Destination of FATE』の旋律を引用し、身に染みる哀愁を醸す。とはいえ、ただ哀しいだけではなく、1分48秒で主旋律を担う楽器を変えてもう一度同じ調べを繰り返すことで、前へ進もうとする意志をも滲ませる。センチメンタルで痛切な一曲である。

どうしようもなく停滞しているのに諦められない雰囲気がよく伝わってきますね。話に挙がった『Crossbell Nostalgia』『The Destination of FATE』もあわせてどうぞ。

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