VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1233 『Demon Tears - Final Battle, Pt. 1』(aivi & surasshu/Ikenfell/NS・PS4・XOne・PC)

www.youtube.com

Happy Ray GamesがおくるRPG・Ikenfellより、

aivi & surasshu作曲、『Demon Tears - Final Battle, Pt. 1』。

ラスボス戦の前半で流れます。

カナダの個人制作スタジオ・Happy Ray Gamesのデビュー作にあたる本作。魔法が普及している世界を舞台に、魔法を使えないはずの少女・Maritteは、失踪した姉を探すべく訪れた魔法学院・Ikenfellで突如として力に目覚め、出会った仲間とともに姉の行方と学院に渦巻く謎を追うことになる。GBAを彷彿させる2Dドット絵による親しみやすいグラフィックと、ファンタジー学園モノに多様な価値観や指向の在り方をブレンドさせた世界観が特徴である。戦闘システムはグリッド上でユニットを動かして進めるシミュレーション形式のターン制コマンドバトルで、タイミングよくボタンを入力することで魔法の効果やガードの軽減率が上昇するといったアクション要素が含まれる。魔法は攻撃や回復の手段としてだけでなく、罠を設置したり最適な位置取りを得たりするのにも用いられ、使い方次第で戦略的な駆け引きを楽しむことができる。シナリオ面では、それぞれ事情と傷を抱えた個性的なキャラとの交流、支え合い、思いやりなどのインクルーシブなテーマが丁寧に描写されている。全体を通して程よい温度感のある仕上がりとなっている。後に公式の日本語訳が追加された。

本作の音楽を担当するのはaivi & surasshuとSabrielle Augustin氏。aivi & surasshuはネット発の電子音楽デュオで、アニメやインディーズの界隈で活躍している。Augustin氏はアメリカ出身の作曲家で、同じくインディー方面で楽曲提供をおこなっている。本作では主にチップチューンと楽器の生演奏を融合させた味わい深いサウンドが収録されていて、インストゥルメンタルはもちろん、一部のキャラのテーマは英語ボーカル入りとなっている。また、楽曲以外にも猫の鳴き声をはじめとする印象的な効果音が揃っている。サウンドトラックはBandcamp経由でデジタル配信されている。

ラスボス戦の前半で流れるのがこの曲である。哀しみの果てに異形と化した存在と対峙するにあたって、憂鬱な響きを纏ったピアノに、ふんわりと覆うように控えめで不穏な効果音が絶えず付き添うことで、非常に叙情的で感傷的な印象を与える。開始からしばらくの間はピアノが中心的な役割を果たすが、ちょうど1分を迎えるとストリングスが加わり、なだらかで美しくて、今にも心の糸が切れてしまいそうなほど沈痛な音色を奏でる。ひたすら切ない曲調だが、1分40秒頃からは低音も交えて力強い盛り上がりをみせるほか、2分あたりでは再びピアノが主体となってミステリアスでメロディアスな音色を紡ぐなど、切ないなかにも様々な表情を覗かせる。身につまされるような悲壮な一曲である。

後半戦で流れる『Demon Tears - Final Battle, Pt. 2』はピアノソロによるスローテンポなアレンジで、終わりに近づくほど切なさがいやましていくのが染みます。あわせてどうぞ。

www.youtube.com