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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1386 『Misty Lake』(Falcom Sound Team jdk/イースV 失われた砂の都ケフィン/SFC)

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日本ファルコムがおくるアクションRPGイースより、

Falcom Sound Team jdk(金田直樹)作曲、5の『Misty Lake』。沼地で流れます。

冒険家アドル・クリスティンの活躍をイースシリーズのうち、ナンバリング5作目にあたる本作。今度のアドルはアフロカ大陸のケフィン砂漠にて、交易都市・サンドリアの有力者の依頼を受けてかつて錬金術で栄えた幻の都を探すことになる。シリーズ初のファルコム自社開発・販売の家庭用機向け新作であり、操作や画面構成などの基礎的な要素が従来から刷新されたうえに、本作の世界観に密接した錬金魔法や、ジャンプと高低差の概念などの新要素も加えられている。操作に関しては体当たりで攻撃する形式から、剣を振って盾を構えるアクション重視なつくりに変わった。画面構成に関してはメイン画面が飾り枠で囲まれ、枠外にステータス類が表示される形式から、枠を撤廃して画面いっぱいに美麗なドット絵が表示されるようになった。錬金魔法とはエレメンタルを組み合わせて錬石をつくり、それを装備して詠唱する様々な攻撃魔法のことで、剣術とは独立して習熟のレベルが設けられている。高低差の視認性や魔法の実用性などを中心にやや大味なところがあり、全体のボリュームは小粒だが、意欲的な要素を多く導入しつつ一定の整合性が保たれた仕上がりとなっている。後に拡張版のエキスパートが発売されたほか、PS2向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのはファルコムサウンドチーム・Falcom Sound Team jdkの面々。具体的な内訳は新井智氏、石川三恵子氏、金田直樹氏、白川篤史氏、中島勝氏である。石川氏は初代から、金田氏、白川氏、中島氏は4から、新井氏は本作からシリーズの作曲に携わっている。本作ではシリーズサウンドならではの勇ましさを残しつつ、スーファミ音源の特長を活かしたシンフォニック路線で比較的しっとりとしたメロディアスな楽曲が揃っている。サウンドトラックについては、一部楽曲+アレンジとボーカルを加えたイメージアルバム、エキスパートの追加曲含む全曲収録の通常盤、一部楽曲を交響アレンジしたオーケストラ盤が存在する。曲ごとの作曲者は金田氏の言及により判明している。

沼地で流れるのがこの曲である。序盤に訪れる場所で、はじめは薄暗く雨が降りしきっているが、洞窟でのイベントを経ると雨が止む(上記動画は雨の効果音が入った状態の音源だが、雨が止むと効果音は消える)。そうしたなか、非常に澄んだオカリナの旋律と、停滞するような調子で静かに奏でられるハープ、コードを担うストリングスを組み合わせることで、強く訴えかけるような寂寥感を漂わせる。厳密には曲の一部ではないが、絶えず聴こえる雨の効果音がさらに寂寥感を引き立てている。25秒からオカリナに代わって、また一味異なる寂寥感を帯びた旋律を紡ぎ、52秒からはストリングスが主旋律を務めるようになると、それに呼応して伴奏部分も勢いづく。そうして曲の流れが変わったところで根底にある切なさは変わることなく、むしろ勢いづくことでますます雨の効果音との相乗効果で悲劇的な色合いが増す。ループ直前の1分22~24秒には音が途絶えて雨しか聴こえない間があり、それが心に深く浸透する余韻を生み出している。ひどく胸に迫る一曲である。

雨が止んで効果音が消えても依然として曲が暗いから物悲しいままで、かえって雨が恋しくなる感じがするんですよね。