セガがおくるシューティング・クライングより、
磯田健一郎作曲、『STAGE 7』。7面で流れます。
メガドライブ向けのオリジナル作品として登場した本作。ウイルス研究と遺伝子操作の功罪に揺れる人類が第二の地球となるべく改造した惑星・アヴァロンを舞台に、突然変異で誕生した亜生命によって乗っ取られた理想郷を奪還すべく、飛行型生物兵器が出撃することになる。全8面構成で2人同時プレイに対応した横スクロールシューティングで、生物のおぞましさ、とりわけ虫に焦点を当てた醜怪なデザインを特徴とする。自機は4種類あり、それぞれ見た目やスクロール速度、使用可能なオプション兵器が異なる。オプション兵器は自機ごとに最大4つ、ぜんぶで7つ存在し、攻撃性能を持つのみならず敵の弾を防ぐ盾にもなり得る。拡散弾やレーザー、誘導弾など、各兵器は3段階までパワーアップ可能で、強化に応じて威力や弾数が増大する仕組みである。全体的にシステムやグラフィックに派手さはないが、その分、全編にわたって不気味なまでに滑らかな挙動や素敵な多関節表現を堪能することができる。総じて底知れぬユニークさが黒光りする仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは磯田健一郎氏。スタッフロールではK.N.U.名義でクレジットされている。フリーランスの作曲家で、同じく当時フリーランスとして本作のディレクターを務めたKazumi Nasuこと磯田重晴氏の実兄である。本作の薄気味悪い世界観を表現するにあたって、音楽が果たしている役割は大きく、重低音で蠢くミニマルアンビエントやインダストリアル系の秀逸な楽曲が揃っている。とにかく淡々としていて似たような曲調が続くが、それがかえって癖になる印象をもたらす。サウンドトラックは本作単体では未発売だが、作中にサウンドテストが存在するほか、往年のゲーム音楽を集めたLEGEND OF MUSICシリーズのコンシューマーBOXに本作の楽曲が含まれる。
7面で流れるのがこの曲である。黄土色の空を背に無人工場施設群を進むステージで、鉄格子やパイプを這うようにして蠢く亜生命の姿がたくさんみられる。重低音が目立つ楽曲が多い本作のなかでも、この曲は高音域を軸に据えることで独自の存在感と神秘を放っている。10秒ほどミステリアスな音階を行き来した後、やがて入るメロディーは子守歌を想起させるような安らぎを湛えている。20秒からはさらに音色が加わって神秘が深まるが、以降はほとんど変わることなく似通ったフレーズを反復する。そのまま聴き進めて1分12秒でようやくメロディーが抜けて変化が訪れるが、じきにループに至って再び頭から繰り返される。生物の本質、尊くも奇妙な側面をよく捉えた一曲である。
ちなみに私は虫が苦手です。でも多関節表現は不気味である以上に素敵だと思うんですよね。