コンパイルハートがおくる謎解き×パニック×ザッピング3DダンジョンRPG・
メアリスケルターより、大山曜作曲、Finaleの『Ice Edge』。
極寒の監獄塔での通常戦闘で流れます。
血と狂気の脱獄劇を描くメアリスケルターシリーズの完結作にあたる本作。前々作のラスト、地上に辿り着いたはずのジャックたちは、地上の惨憺たる有り様と処刑台少女の暴虐を目の当たりにし、空高く浮遊する悪食の監隊塔で最後の死闘に挑むことになる。ベースとなる前々作、その同じ時間軸で並行する前作、メディアミックスの小説版、シリーズのすべてに連なる地続きの物語を描いていて、予習・復習用に過去作の全イベントやCGを振り返られるADVモードが収録されている。本作はザッピング制を押し出していて、3グループに分かれて主人公を切り替えながらダンジョンを攻略していく。血や穢れを軸とした戦闘システムは健在で、新たに探索中と戦闘中に張り付いてくるベイビメアが登場した。付かれた仲間は状態異常や特定コマンド使用不可といったデメリットを被るが、敵の弱点を突いて返り血を浴びせるなどして除去すれば相応のボーナスを得られる仕組みである。舞台や物語の性質上、新旧キャラが入り交じる群像劇的な醍醐味が加わった一方で、グループに分断されてメンバー固定されていることから交流の幅が限られている。良くも悪くも最後まで従来通りの大味さがあるが、集大成らしい伏線回収と収束が味わえる仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。
本作の音楽を担当するのは大山曜氏、川越好博氏、神保伸太郎氏、中村英士氏、萩原和音氏、平田聡氏、xaki氏。いずれも音楽制作会社・ZIZZ STUDIOに所属する作曲家で、このうち大山氏は本作の音楽プロデュースも務めている。大山氏、川越氏、神保氏、萩原氏はシリーズ皆勤賞で、他三名は初参戦である。メルヘンとダークファンタジーから成る退廃的で凄絶な世界観に合わせて、本作ではこれまでのシリーズサウンドを踏襲しつつさらにクライマックスらしく昇華させた白熱の楽曲群が揃っている。特に戦闘曲は監獄ごとに専用曲があって豊富に用意されていて、エレキバイオリンやエレキギターをフィーチャーした情動的な曲調をたっぷり楽しめる。サウンドトラックは限定盤に同梱されていた。
極寒の監獄塔での通常戦闘で流れるのがこの曲である。極寒の監獄塔は名前の通り、四方八方が凍てついていて氷に覆われた場所であり、他の監獄とは異なり探索中はフィールドBGMが一切流れない。が、ひとたび戦闘に入るとバイオリンがにわかに滑るようなポルタメントをかけて妙に耳に残る第一印象を生む。そこから低音を中心として速弾きバイオリンでリズミカルに掻き鳴らし、6秒頃から徐々にパーカッションが加わって勢いを帯びていく。11~12秒で一気呵成に高音アルペジオを披露した後、エレキギターが参戦していよいよ本格的にロックナンバーへと変貌する。24秒で重音をうまく利かせながら歯切れ良くノリノリなメロディーを紡いでいくさまは痛快で、一瞬溜めてから入る36秒以降のサビは気味が良くて胸がすくような清々しさがある。とはいえただ爽やかというのではなく、触れれば怪我を負いそうな刺々しさがある。特に58秒~1秒あたりの高音は非常に鋭利に響き渡るし、1分11秒から新フレーズが入ると凛とした存在感をみせつける。冴えたキレのある一曲である。
こういう格好良いバイオリンには憧れますね。