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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1682 『秋季大会』(下村陽子/水島新司の大甲子園/FC)

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水島新司著の野球漫画を原作とする、

カプコンがおくる野球シミュレーション・水島新司大甲子園より、

下村陽子作曲、『秋季大会』(仮称)。神奈川県秋季大会で流れます。

水島新司氏の野球漫画「ドカベン」と「大甲子園」のゲーム化作品にあたる本作。ドカベンこと山田太郎が所属する神奈川の明訓高校野球部から甲子園優勝を目指すことになる。コマンド入力で投手なら球種・球速・コースを、打者なら打ち方・ミートゾーン・スイング速度を選んで進めるシミュレーション形式のスポーツゲームである。物語に沿って明訓で山田が一年のときから試合を勝ち抜いていく大甲子園と、好きなチームで自由にCPUや2Pと競える対戦モードが収録されている。大甲子園では基本的に1試合丸ごとではなくダイジェストで重要なシーンを遊べる仕組みで、強打者の登場や同点の接戦、サヨナラ展開などの美味しい場面をテンポよく楽しめる。また、原作再現要素として溜めたPOWを消費して発動できる決め球や秘打などの必殺技がある。球の軌道や飛距離が大胆に変化したり、なかにはミートゾーンが1マスのみになる選手もいたりして、ビジュアル表現も含めて個性がよく反映されている。試合重視のゲーム性のため個別のキャラの交流や会話は含まれず、主要人物以外の固有グラフィックが限られるなど、キャラ描写こそ薄めだが、原作らしさを十分に感じられる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは下村陽子氏。当時カプコンに所属していた作曲家である。キャリアが長いベテランの氏にとって本作は初期の担当作品に該当する。本作では各大会を彩る試合BGMはもちろん、山田や里中をはじめとする特定のキャラには専用のテーマ曲が設けられていて、打席に立つ際に流れて盛り上げてくれる。熱血で使命感のあるメロディアスな楽曲が多いほか、殿馬の秘打使用時には名称の由来となったクラシックや民謡のアレンジがかかる点が印象深い。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

神奈川県秋季大会の試合中に流れるのがこの曲である。ローカルな開催とはいえ負けるわけにはいかない試合であり、この曲には強い意気込みと覚悟が感じ取れる。冒頭から破竹の勢いで奏でられるメロディーが印象的で、疾走感と緊張感が綯い交ぜになった手ごわい雰囲気が漂っている。初めは短く細かく音階を行き来して目まぐるしい展開をみせるが、12秒から長めに音を鳴らすようになり、メリハリをつけながらじわじわと焦燥感を強めていく。18秒でここぞとばかりに素早く迫力あふれるフレーズを披露すると、瞬時にしてぐっと気が引き締まるような感触をもたらす。1ループ約20秒で潔く収まりが良く、非常に聴き応えのある一曲である。

いいですね。このメロディーセンスには痺れます。