VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1711 『Title』(Mark Knight/Mario's Time Machine/SNES)

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The Software Toolworksがおくる学習ゲーム・Mario's Time Machineより、

Mark Knight作曲、SNES版の『Title』(仮称)。タイトル画面で流れます。

アメリカのゲームメーカー・The Software Toolworksによるマリオシリーズのキャラを借りた日本未発売の学習用ソフトにあたる本作。今度のマリオは、クッパが我欲を満たすためにタイムマシンを使って過去の人類史上重要な遺物を略奪したと知り、望まぬ歴史改変を防ぐべく各時代を巡って遺物を返すことになる。ポイント&クリック形式のPC(MS-DOS)版をベースにした家庭用移植で、リンゴや王冠など何らかの歴史的意義のある15個の遺物について学び、出題される穴埋め問題に答えて遺物を正しい時代に返還するのが主な流れである。プラトーがいる紀元前ギリシャアテネジャンヌ・ダルクがいる中世フランスのオルレアン、ニュートンがいる近代イギリスのケンブリッジガンジーがいる二次大戦後のカルカッタなど、古代から現代に至るまでの世界史の主要な出来事について知見を深めることができる。ゲームの大部分は様々な時代を巡って情報収集して問題を解くような内容だが、タイムマシンでワープするときにはサーフィンのミニゲームが入るし、ワープ先の街並みや人々には特色があって話しかけたときの反応もまちまちで、ちょっとした諸国漫遊気分が味わえる。総じて地味だが勉強にはなるかもしれない仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはMark Knight氏。本作のパブリッシャーであるMindscapeに当時所属していたイギリス出身の作曲家である。本作では作曲に加えて効果音も手がけている。本作はPC版、後発のNES版など機種ごとに作曲陣が変わっていて、Knight氏が担当しているのはこのSNES版のみのようである。学習用である点、マリオたちの時間軸を除けば残りはファンタジーではない現実をモチーフにしている点を踏まえて、本作の音楽は明るいけれど派手さを抑えているような印象がある。マリオシリーズ、特にスーパーマリオワールドからのアレンジがいくつか含まれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。冒頭からピロピロと鳴る脱力感のある音色が特徴的で、奔放な旋律とは対照的に渋めのベースとパーカッションがしっかり堅実に響き渡る。音程が変わっているもののこの曲はスーパーマリオワールドの『バニラドーム(MAP)』(作曲は近藤浩治氏による)を下敷きにしているようで、リフやリズムの刻み方がよく似ている。リフとリズムの合間、中音域で響くエレクトリックピアノ風の音色はオリジナルのフレーズのようである。特に30秒過ぎからの間奏部分には独自の味があり、落ち着いているようで上ずっているような胡乱な響きがある。43秒や51秒など次の音色に移る直前に装飾音を加えて滑るような印象を与えたり、53秒で再び象徴的なリフが入る際には前よりも華やかに合奏したりして、終始あまり曲調に大きな変化がないなかでも一定の抑揚をつけている。この手のタイトル曲にしては尺が長めで、どこが区切りなのか一見判断しづらいが、1分14秒になってループ部分に繋がる。一般的なタイトル画面のBGMのイメージとは離れるが、学習ゲームと思えば腑に落ちる不思議な雰囲気を持つ一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。いわゆるキャッチーとかノリノリとかそういう感じではないけど、なんだか耳に残りますね。バニラドームの曲もあわせてどうぞ。

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