Suzuki Suzuzouがおくるダンジョン探索RPG・Path of the Abyssより、
hasu作曲、『Warcry -振臂一呼- 』。モガス鉱山における通常戦闘で流れます。
インディーゲーム開発者のすずきすずぞう氏による代表作に当たる本作。魔の巣窟たる東ウェルトデンの遺跡を舞台に、プレイヤーは噂を聞きつけた冒険者となって前人未踏のダンジョンに挑むことになる。主観視点で自由なキャラビルドで攻略できるダンジョンクロウル系のRPGで、モノクロのペン画で表現された耽美的なグラフィックと独自のメルヘンチックなタッチがあるキャラデザインが目を引く。特筆すべきは戦闘システムで、敵味方の行動順が入り乱れながらあらかじめ3×3の隊列パネルにセットしたスキルを発動してリアルタイムで進めていく。キャラをどう育成し、パーティをどう構築し、どのスキルをどの位置にセットするか、スキル発動に使うリソースをどう管理するか、事前の戦略立てとその場の判断力が問われる。そのうえハクスラの醍醐味が徹底されていて、ダンジョンで戦闘を重ねるたびに制圧率とマナ汚染度が上昇し、前者は戦利品の発見率が、後者は戦利品の品質に影響する。長く潜るほど量・質ともに優れたものが入手しやすくなるが、マナ汚染度は高いと戦闘中にランダムなデバフを喰らったり死亡時のペナルティが増加したりするデメリットがあり、ハイリスクハイリターンな駆け引きを楽しめる。嵌まればどっぷり嵌まれる味わい深さがある仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのはhasu氏。作曲やイラスト制作など主にネット上でマルチで活動するフリーランスのクリエイターである。ゲーム音楽方面では既存作品のアレンジや、オリジナルだとインディーゲーム向けの楽曲提供を手がけている。本作ではオールドスクールな雰囲気に合わせてツボを押さえた鮮烈なFM音源サウンドが揃っている。ダンジョンごとの探索BGMと戦闘BGMが質よく作り込まれていて、レトロな神秘と中毒性を隅々まで味わい尽くすことができる。サウンドトラックは氏のBandcampやBoothなど各種デジタルストア経由で配信されている。
モガス鉱山における通常戦闘で流れるのがこの曲である。序盤~中盤あたりで立ち寄るダンジョンで、かつては良質な鉱石の産地として地域経済を支えたが、今や小鬼どもが巣食う廃坑と化している。ダメージ床が多く、朽ちた人骨などが散らばる場所での戦闘を彩るにあたって、手始めに重量感あふれるオーケストラヒットと息もつかせぬリズミカルなドラム捌きを披露する。どこかプリミティブでエスニックな雰囲気があり、4秒あたりからシタールの独特な倍音が掻き鳴らされ、8秒から本格始動することでますます臨場感と昂揚感を高める。スピーディーでストイックでどことなく不安定な印象が纏わりついていて、26秒頃から畳みかけるようにけたたましい旋律が紡がれるさまは圧巻である。しばらく勢いよく突き進んだあと、1分18秒あたりから金属質でミステリアスなフレーズが入るが、これはモガス鉱山のダンジョン曲『Mining Road -寂寞たる鉱山-』を彷彿とさせる。終始一貫して激しく騒がしい曲調のなかにうまく幻想的な響きをブレンドさせているのが実に秀逸である。本能的に武者震いさせられる一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。FM音源に包まれて至福ですね。副題の四字熟語は「しんぴいっこ」、己を奮い立たせることです。ちなみにアーリーアクセス時点からサントラも出ていたのですが、一応正式リリースに合わせて〈2025年の曲〉にします。記事のなかで触れた『Mining Road -寂寞たる鉱山-』もあわせてどうぞ。