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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#831 『縁日の境内』(松尾早人/不思議のダンジョン 風来のシレン3 からくり屋敷の眠り姫/Wii)

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チュンソフトがおくるダンジョンRPG風来のシレンより、

松尾早人作曲、3の『縁日の境内』(仮称)。同名のダンジョンで流れます。

風来のシレンシリーズのうち、ナンバリング3作目にあたる本作。風来人のシレンとイタチの相棒・コッパは、久々に再会した叔父であり剣術の師匠でもあるセンセーとともに、莫大な財宝が眠るというからくり屋敷に挑戦することになる。日本神話をベースにしたシナリオ重視のシリアスな作風が特徴で、システム面での大きな変更点として、レベルリセットの廃止が挙げられる。ダンジョン間でレベルが継続されることで、ローグライクらしさよりもRPG性が強まったほか、センセーをはじめとする仲間をダンジョンに同行させられるようになったり、防御を捨てて攻撃に特化した二刀流スタイルが導入されたりするなど、目新しい要素が多い。今までのシリーズとは雰囲気もゲーム性も変化した異色の仕上がりとなっている。後にPSPに移植された。

本作の音楽を担当するのは松尾早人氏。すぎやまこういち氏も名を連ねているが、過去作の流用曲のみでの参加である。松尾氏は音楽制作会社イマジンに所属する作曲家で、風来のシレンシリーズにはGB2以降携わり続けている。本作では前作から8年ぶりのナンバリング新作ということで、先に触れた通りいくつか過去作の楽曲を借りているが、その他の音楽は幅広く一新されている。陽気な印象が薄れ、シリアス寄りになった作風にあわせて、今まで以上に純和風な空気感が徹底されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

縁日の境内は、物語後半、一時離脱していた仲間が復帰した直後に訪れるダンジョンである。名前の通り、お祭りの最中で提灯や屋台が立ち並んでいるが、人の気配がなく、モンスターしかいないような、不気味な寂寥感が漂っている。そこで流れるこの曲は、周囲の景観に溶け込むようなエレクトリックピアノの落ち着いたイントロから始まり、50秒ほど静謐な響きに徹する。その後は祭囃子のような調子でリズミカルに太鼓と篠笛とが奏でられ、束の間の賑やかさを感じさせるが、1分半頃には再び元の静寂へと回帰する。寂れたお祭りの、尾を引くような余韻が印象的な一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。そろそろ夏が終わるこの残暑の季節に合った、とても耳馴染みのする一曲ですね。