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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#933 『神骸の王』(椎名豪/CODE VEIN/PS4・XOne・PC)

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バンダイナムコがおくるドラマティック探索アクションRPG・コードヴェインより、

椎名豪作曲・篠田大介編曲、『神骸の王』。ラスボス戦で流れます。

GOD EATERの開発チームが制作した死にゲーとして登場した本作。審判の棘により地殻が割け、世界が崩壊した近未来を舞台に、滅びの定めに抗うべく人為的に吸血鬼と化して超常的な力を得た者たちの一員として、主人公は同じ境遇の仲間とともに生き抜くことになる。いわゆるソウルライクな高難度のゲーム性を誇り、吸血牙装と呼ばれる防具と吸血攻撃が一体となった武装を駆使し、敵から血を奪い、溜まった血を消費して特技を発動したりステータスを強化したりできる。戦闘で共に戦い、的確にサポートしてくれるバディが同行する点も特徴的で、自由度の高いキャラメイクはもちろん、ブラッドコード(戦闘スタイルを気軽に変更できるジョブのようなもの)による成長要素とカスタマイズ性が充実している。基本的には死にゲーだが、難易度を緩和する救済要素も多く、アクション性や歯応えより世界観やキャラ描写に注力した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは椎名豪氏。作曲はすべて椎名氏によるものだが、オーケストレーション担当で岩城直也氏、江原大介氏、亀岡夏海氏、篠田大介氏、竹岡智行氏、宮野幸子氏が参加している。椎名氏はGOD EATERシリーズでもおなじみの、かつてバンナムに所属していた現在フリーランスの作曲家である。死にゲーらしくプレイ中は概ね環境音で構成されるが、GEとも共通点が多い本作の退廃的な世界観にあわせて、要所要所でクワイアに重きを置いたオーケストラサウンドが響くことで、壮大かつ悲壮的な盛り上がりを見せる。また、プレイヤーの行動次第で音楽が変化するインタラクティブな要素も含まれる。サウンドトラックは数量限定生産版に付属されているが、一部の楽曲は未収録である。

ラスボスのうち、バッドエンドを除くルートで戦うことになる二戦目で流れるのがこの曲である。出だしから荘厳なコーラスとオーケストラが力いっぱい響き渡り、一瞬にしてこれが正真正銘の最終決戦だと知らしめてくれるような極上の緊張感をもたらす。恐怖を感じさせるほど切迫した雰囲気を漂わせるクワイアと、猛り狂うような勢いの管弦楽器が重なり合うことで、空前絶後の盛り上がりを生み出す。47秒あたりで悲劇的なソプラノが一連のフレーズを締め括ると、51秒からはゆったり甘美な弦の旋律が紡がれる。1分5秒からは弦の上に合唱が加わって徐々に盛り上がりを取り戻し、曲後半にかけてさらに張り裂けんばかりの空気感を醸す。吸血鬼たちの軛を断ち切るための戦いを凄絶に彩る一曲である。なお、バッドエンドでもラストのムービーシーンで曲が使用される。

バッドエンドの使用場面ではシナリオの都合により曲がぶつ切りになりますが、それがまた劇伴として演出的に優れているように感じます。ちなみに一部のボス戦で流れる『神骸の継承者』などともフレーズが共通していて、そちらはカウンターテナーがすごく綺麗です。あわせてどうぞ。

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