VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1300 『祖霊の王』(北村友香/ELDEN RING/PS4・PS5・XOne・XX|S・PC)

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フロムがおくるアクションRPG・エルデンリングより、

北村友香作曲、『祖霊の王』(英題は『Regal Ancestor Spirit』)。

祖霊の王との戦いで流れます。

死にゲーの金字塔であるSOULSシリーズの精神的後継作にあたる本作。黄金樹を戴く滅びの世界・狭間の地を舞台に、褪せ人として流れ着いた主人公は、かつて砕かれた黄金樹の根源たるエルデンリングの断片を集め、エルデの王となるべく旅立つことになる。シームレスに繋がる広大かつ破滅的な美しさを湛えたフィールド、多彩な武器・戦技・魔術等を自分好みに組み合わせられる育成の自由度、叙事詩的な奥深さのある世界観、そして一見無慈悲だが工夫の余地と挑戦し甲斐のある熾烈な難易度が特徴のオープンワールド形式のアクションRPGである。攻略の順番も手段も大部分がプレイヤーの手にゆだねられていて、物語を進めるうえで通るルートのほかにも数多くのダンジョンや謎解き、NPCとの交流といった寄り道要素が用意されている。馬での移動、マップ機能、ジャンプやしゃがみをはじめとするアクション、ソロでも味方を召喚して疑似的に共闘できる遺灰システムなど、従来のSOULSシリーズにはなかった要素もふんだんに搭載されている。膨大なコンテンツ量に見合った濃密で秀逸なロールプレイング体験を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは北村友香氏、工藤吉三氏、齋藤司氏、富沢泰氏、宮澤翔衣氏。工藤氏は音楽制作会社ベイシスケイプに、それ以外は当時フロムに所属していたか現在も所属している作曲家である。このうちキャリアの長い齋藤氏が本作のリードサウンドデザインを手がけているが、作曲そのものに関しては五名とも均等に担当している。本作では退廃的で壮大な作風を表現するにあたって、弦楽器やクワイアを印象的に用いた重厚で悲壮感あふれるオーケストラサウンドが多く揃えられている。周囲の環境に溶け込むような静かなものから、ボス戦などを中心に激しく勇ましく盛り上げてくれるもの、ときにはアカペラや弦のソロといった意識を惹き付けられるものまで、様々な楽曲を楽しむことができる。また、オープンワールドらしく戦闘・非戦闘時などに応じて切り替わる仕組みも取り入れられている。サウンドトラックは限定盤の特典として付属されていたほか、追って各種デジタルストアでも市販されるようになった。

祖霊の王との戦いで流れるのがこの曲である。青白い大鹿の骸の如き姿をしたボスで、その玉体は神々しいまでの威容を誇る。周囲の動物たちを吸収して体力を回復する、別の地点に瞬間移動する、などの特殊な行動を取ることから、自然の驚異や神秘を強く感じさせる演出重視のボス戦という様相を呈している。そうした性質を踏まえて、曲の出だしはまるで枯れ葉が風のまにまに吹き散らされてゆくような効果音が鳴り、この効果音はその後も22~24秒や44~46秒などで継続的に用いられる。重く分厚く鳴る弦楽器の伴奏を下敷きに、14秒から徐々に甘美なコーラスやハープ、伸び伸びと響くストリングスを加えて豊潤な雰囲気を漂わせる。36秒ではさらにフルートが非常に澄んだ音色を奏で、曲全体を貫く美しさに磨きをかけるが、その一方で41~44秒で恐怖を誘うような歪な音色をも配置していて、美しさと恐ろしさの相乗効果で畏怖をもたらす。最も盛り上がるのは2分20秒以降で、捉えどころのない旋律ながらも心を震わせる霊妙な響きを帯びている。精緻を極めた一曲である。

フルートがいいですよね、まるで篠笛みたいな使われ方でさりげなく華を添える感じがとても素敵です。