VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#068 『ALONE』(伊藤賢治/サガ フロンティア/PS)

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スクウェアがおくるRPGサガフロンティアより、

伊藤賢治作曲、『ALONE』。生命科学研究所で流れます。

サガシリーズのうち、7作目にして初のPS向けの作品として登場した本作。七人の主人公から一人を選択し、サスペンスやヒーローものやSFに至るまで、様々なテイストのシナリオを追体験していく。リージョンと呼ばれる多種多様な小世界のなかで、それぞれまったく別の物語を背負った主人公たちが繰り広げる群像劇が特徴で、戦闘は従来通りバトル中に新技を閃くことがあるほか、技と技が繋がって特殊な攻撃を生み出す連携システムが新しく導入されている。ごった煮の世界観と相まって、奥深い魅力を持った仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは伊藤賢治氏。当時スクウェアに所属していた作曲家で、Sa・Ga2で目覚ましいデビューを果たして以来、サガシリーズの楽曲を軒並み担当している。氏は本作では雑多な世界観にあわせて、音楽の多面性を表現すべく作曲に挑んだらしく、テクノやロック、プログレなど、様々なジャンルの楽曲が揃っている。特にラスボス戦は七人分の主人公それぞれに専用曲が用意されているなど、当時としてはボリューム満点な出来映えとなっている。サウンドトラックは曲目に記されていないボーナストラックも含めて収録されている。

生命科学研究所で流れるのがこの曲である。生命科学研究所はその仰々しい名前に反してイベントがないダンジョンだが、研究員に話しかけると意味深な台詞とともに問答無用で戦闘に突入する。そうした曰くありげな雰囲気を演出するにあたって、簡素ながらも耳に残りやすい旋律が、見事な寂寥感を生み出している。音数を絞った素朴なイントロで始まり、30秒手前で笛の主旋律が加わると、その物憂げな調べがとても心地良く響くとともに、独特なむなしさをやるせなさを感じさせる。1分12秒では一段落ついた笛のフレーズに被せるように音色が響き、オクターブを下げて再び似通ったメロディーをなぞる。旋律はほとんど共通しているが、フレーズ終わりの2分前後から変化がみられる。とりわけ2分6秒頃からのストリングスが印象的で、目一杯に悲壮な音色を奏でて哀愁を漂わせた後、ループ直前の2分31秒~38秒ではその悲劇的な余韻に浸るように笛の高音で締め括る。全体を通して美しくも強い喪失感に満ちた一曲である。

イベントがないのがかえって不気味さと音楽の素晴らしさを引き立てている感じがしますね。