VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#321 『RAGING DEICIDE』(楠雅弘/エスプレイド/AC)

www.youtube.com

ケイブがおくる縦スクロール弾幕シューティング・エスプレイドより、

楠雅弘作曲、『RAGING DEICIDE』。ボス戦で流れます。

首領蜂シリーズに続くケイブシュー第2弾として1998年に登場した本作。近未来の東京を舞台に、超能力・ESPによる犯罪が蔓延るなかで、巨大化する犯罪組織・夜叉に対抗すべく、ESP者の相模祐介らが立ち向かうことになる。ステージはぜんぶで五面、選択したキャラクターによって構成が若干異なり、スタイリッシュな世界観と多くは語られない淡泊なシナリオが特徴である。爆風を引き起こすパワーショットを軸に、ぐんぐんと倍率が伸びていく爽快なスコア稼ぎが印象的で、本作独自の魅力を醸す仕上がりとなっている。後年には精神的後継作のエスプガルーダが登場したほか、新要素を加えた移植(Ψ)がスイッチとPS4向けに発売された。

本作の音楽を担当するのは楠雅弘氏。当時、音楽制作会社ツーファイブに所属していた作曲家である。また、移植のΨではAC音源を基にしたステレオバージョンの編曲と追加曲の作曲を溝口哲也氏が、新規アレンジバージョンを細江慎治氏をはじめとする音楽制作会社スーパースィープの面々が手がけている。楠氏がケイブの作品を担当するのは本作が初で、後に和風STGぐわんげでも作曲に携わることになる。本作では曲数自体は多くないが、近未来SFにファンタジー要素を加えた作風にふさわしい珠玉のテクノサウンドが揃っている。サウンドトラックはAC音源が怒首領蜂と一緒に収録されているほか、Ψ音源のもの、アレンジ音源のものがそれぞれ存在する。

ラスボスも含め、ボス戦で流れる音楽はこの曲だけである。通常のボスが相手だろうとラスボスが相手だろうと、出し惜しみせず最上級の昂揚感を漂わせるエネルギッシュなキラーチューンである。鋭利でエッジが効いたギターリフに、17秒からはダンサブルな電子音を加えてさらにいっそう華やかに盛り上がる。サビも似たようなフレーズの反復ではあるが、フレーズが終わる42秒で突き抜けるような高音を奏でながら自然と次のループに入ることで、継ぎ目なく耳馴染みする印象を与える。曲尺の短さ、すくなくとも五回は聴くことになるシチュエーションを鑑みても、何度でも新鮮な刺激を生み出し、吸い込まれるような中毒性を誇る一曲である。なお、曲名は「猛り狂う神殺し」を意味し、エスプレイドの英語表記であるESP RA.DE.のRA.DE.はその略称である。

Ψではこの曲だけで6種類のアレンジが用意されているという充実ぶり&愛されぶりですが、さすがに数が多いので紹介は割愛します。