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#678 『砂漠の山嵐』(福森秀敏/ガンフロンティア/AC)

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タイトーがおくる縦スクロールシューティング・ガンフロンティアより、

福森秀敏作曲、『砂漠の山嵐』。1面道中と5面のボス戦で流れます。

西部開拓時代を彷彿させる独特な世界観が特徴の本作。開拓惑星グロリアを舞台に、宇宙海賊ワイルドリザードに征服された星を解放すべく、空飛ぶ拳銃・デスペラードを駆ることになる。ステージは全6面からなり、6段階までパワーアップするショットや金塊25個でボム1つに変換される武器を駆使しながら攻略していく。プレイスタイルに応じて内部ランクが変動、難易度が上下する仕組みとなっているほか、特筆すべきはウェスタンな雰囲気を隅々まで堪能できる背景美術と、語らずとも演出で魅せる細部へのこだわりで、当時のSTG界において新境地を切り拓いたと言える仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは福森秀敏氏。PU-CHIN名義でも知られる作曲家で、タイトー社員ではなく外注であったためかスタッフロールに記載はなく、かわりにサウンドディレクターとしてYACK(渡部恭久氏)とOGR(小倉久佳氏)の名前が確認できる。制作当時の逸話として、それまでタイトーでは守秘面の関係で外注作曲者にはプレイ画面を見せないで作曲させていたが、本作では開発室前でダンボールによるバリケードをつくり筐体を設置、福森氏自らに触ってもらって楽曲づくりの参考にしてもらい、外注制作においても画面を見せることの先例になったという。そうして出来上がった楽曲は、いずれも近未来的なSFサウンドでありつつ、荒涼感漂う西部劇らしい作風も反映していて、どの場面でどの曲を使うかという点も含めて世界観に合致した仕上がりとなっている。サウンドトラックはG.S.M. 1500 SERIESの一環としてルナークとともに収録されたものと、メタルブラックおよびダイノレックスとともに新録されたものがある。

最初のステージである1面道中、そしてクライマックスも近い5面のボス戦で流れるのがこの曲である。イントロから響く重低音に、メタリックな電子音が疾走感たっぷりに重なり、情熱的でありながらどこか悲劇的でもある旋律を紡いでいく。その渋くて勇ましい音使いは、敵を掃討しながら黙々と荒廃した砂漠を進むストイックさがよく表現されているだけでなく、満を持して5面ボス戦でも用いられることで、激戦に次ぐ激戦をドラマチックに彩る。同じ曲を複数の場面で効果的に活用する好例を示した一曲である。

5面のインパクトはたぶん5面道中の曲の良さも大きいでしょう。『ユンファオ』もあわせてどうぞ。

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