スターフィッシュがおくるアクションシューティング・雪ん娘大旋風より、
福澤正洋作曲、『地獄谷』(仮称)。5面道中で流れます。
新・中華大仙に続くスターフィッシュ製のSTGとして登場した本作。人間の青年に恋した雪女・沙雪は、妖怪に呪われたという彼を救うべく、呪いを解く霊薬を求めて旅することになる。雪女らしくショットはつらら、ボムは吹雪という構成で、全方位スクロール型のステージで端々まで自由に探索できる仕組みとなっている。敵はポップでコミカルな妖怪だらけ、2Pモードでは沙雪の妹・小雪も参戦して一緒に戦うことになるなど、妖怪らしさが隅々まで浸透した仕上がりとなっている。PS2に移植されたものの、諸事情により流通量がすくなく中古価格が高騰し、一時は幻のプレミアソフトとして名高かったが、最近になってスイッチとPS4向けに再移植された。
本作の音楽を担当するのは福澤正洋氏。フリーランスの作曲家で、かつてナムコに在籍していた時代にネビュラスレイやゼビウスアレンジメントなどのシューティングゲームに携わった経験がある。本作では全曲単独で手がけていて、和と氷の世界観にあわせて、清涼感のある和風テクノ・トランスサウンドを生み出している。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
地獄谷は5番目のステージで、霊薬の材料となる妖怪の羽が採れる場所だが、そこで流れるのがこの曲である。枯れ木の谷、蓮華の水辺、炎の洞窟など、様々な景色が待ち受ける道中を彩るのが、この爽やかで美しい一曲である。均整のとれた小綺麗なピアノの伴奏に、三味線や篠笛を思わせる和楽器の旋律がうまく絡み合うことで、地獄谷という恐ろしい名前からは想像できないほどの透き通るような優雅さを誇る。淑やかで雅やかで、決して暗くはないがどことなく寂寥感のある音使いが、万物を凍てつかせながら谷を突き進む沙雪の健気な姿をいっそう彩り豊かに印象付けてくれる。
主旋律の入れ替わるタイミングが好きで、イントロの変わり目はもちろん、38秒あたりでビブラートのような震えがかかって、42秒から笛にバトンタッチする流れがとても耳に馴染んで気に入っています。