Junction Point Studiosがおくるアクションアドベンチャー・エピックミッキーより、
James Dooley作曲、『Lonesome Manor』（『ロンサム・マンションの中』とも）。
同名のステージで流れます。
ディズニーのミッキーマウスを主役とするゲーム化作品のうち、とりわけダークな作風で知られる本作。存在を忘れられたディズニーキャラが暮らす世界・ウェイストランドを舞台に、かつて偶然にも魔法の筆に触れたミッキーは、誤ってインクの魔物を生み出し、それがもとでやがて世界が荒廃してしまい、幾年月を経て再び迷い込んだミッキーは、贖罪のために魔法の筆を手に取り世界を再生させることになる。ミッキーの雛型とも言える旧時代のディズニースター・しあわせウサギのオズワルドが登場し、新旧スターが軋轢を生みながらも共演を果たすのが最大の魅力である。ゲームシステムについては、魔法の筆を使い、消えているものを描くペイント、描かれているものを消すイレーサーの二つのアクションを軸に仕掛けを解き、戦闘をこなしていく点が特徴である。ディズニークラシック特有の濃厚な雰囲気が楽しめる異色作に仕上がっている。
本作の音楽を担当するのはJames "Jim" Dooley氏。映画音楽制作会社Remote Control Productionsに所属するアメリカ出身の作曲家で、主に映画やテレビの劇伴作曲を手がけている。ディズニー関連では、本作以前に「リトル・マーメイドIII はじまりの物語」（アニメOVA）で作曲した経験がある。ゲーム音楽方面ではinFAMOUSシリーズなどを担当したことがある。本作ではダークファンタジー調の世界観にふさわしい、シリアズでダイナミックなオーケストラサウンドが揃っていて、往年のディズニー名曲のアレンジも一部含まれる。本作独自のインタラクティブな仕組みとして、ミッキーがペイントで世界を彩るとフルートやピッコロなどの木管楽器が増えて明るめの曲調に、イレーサーで破壊するとバスクラリネットなどの低音楽器が増えて重めな曲調に変化していく。サウンドトラックは存在するが、未収録曲もすくなくない。
Lonesome Manor、日本語名ロンサム・マンションで流れるのがこの曲である。ホーンテッドマンションをモチーフにした陰気臭い洋館で、その暗澹とした空気感を、アンニュイな色味を帯びた音使いによって肌で感じさせてくれる。手回しのオルゴールを思わせる煌びやかな音色が、バスーンなどの重低音を奏でる管楽器や、せわしげに響く弦楽器と混ざり合って、魔術的な憂いを漂わせる。途中、軽やかな笛と弦のピチカートが紡ぐパートが挿入されたり、後半にかけてドラムが激しく主張するようになって騒がしさが増したりするなど、ただメランコリックであるだけに留まらぬ緩急自在のメリハリに満ちている。怖いもの見たさの好奇心をそそるような、妖しくも遊び心をくすぐる一曲である。
本作はゲームそのものも音楽も、雰囲気づくりが非常に優れていて、あの親しみやすくて底抜けに明るいはずのIt's a Small Worldをものすごくダークにアレンジした『The Gremlin Village』などもとてもおすすめです。あわせてどうぞ。
