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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#975 『ラストバトル』(新田竜一/ヴェルヌワールド/SFC)

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バンプレストがおくるRPG・ヴェルヌワールドより、

新田竜一作曲、『ラストバトル』(仮称)。ラスボス戦で流れます。

海底二万里」などの著者でSFの父として知られるフランスの作家、ジュール・ヴェルヌを題材にした異色のRPGとして登場した本作。ヴェルヌの作品世界を再現したテーマパークを舞台に、突如発生した地震によってパーク内のロボットが暴走、両親とはぐれてしまった主人公とその弟は、同じくパークに居合わせた少年少女たちとともに両親を探すことになる。ヴェルヌの作品をモチーフにした七つの島をめぐって、イギリス人や中国人やインド人など国際色豊かなパーティメンバーと一緒に冒険していく。ゲーム性そのものはオーソドックスかつ大味なRPGだが、近未来的な作風で繰り広げられる快い冒険活劇が特徴である。ヴェルヌが紡ぐ魅力的な世界観をRPGの形で追体験できる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは新田竜一氏。当時バンプレストに所属していた作曲家である。本作の舞台はヴェルヌ生誕200年(2028年)、ロボットたちが多く登場するすこし先の時代の雰囲気を表現するにあたって、RPGらしい勇ましい楽曲のみならず、SFらしいフューチャリスティックな電子音やサイン波などを取り入れたものもすくなくない。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

ラストバトル二連戦の後半で流れるのがこの曲である。ネットワーク経由で逃走を試みるラスボスの脱出路を遮断して逃げ場を封じた後、後半戦では主人公たちもデータの中に入り込んで最終決戦を挑むことになる。イントロから不気味な静謐が漂い、徐々にピロピロと電子音が鳴り始めると、29秒あたりからようやく伴奏らしきものが入り、次いで44秒頃にスネアドラムを軸とするパーカッションも加わる。1分前後で本格的に音が揃い出すと、1分27秒で初めてれっきとした旋律が奏でられ、電子音ともども複雑かつ重厚な響きを生み出す。電脳空間の内部で戦うラスボス戦にふさわしい、異質だが昂揚感あふれる一曲である。

ヴェルヌの小説といえば「月世界へ行く」が好きです。もちろん本作にも登場します。