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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1033 『Spiral Maze!』(保本真吾/NINETY-NINE NIGHTS/X360)

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Q Entertainmentがおくるファンタジーアクション・ナインティナインナイツより、

保本真吾作曲、『Spiral Maze!』。アーヴァリア山脈で流れます。

水口哲也氏率いるQ Entertainmentと、Kingdom Under Fireシリーズで知られる韓国の開発会社・ファンタグラムの共同制作作品として登場した本作。オーブをめぐって光と闇、人間とゴブリンの勢力がぶつかり合う世界を舞台に、7人の主人公が戦争に赴くことになる。ハイファンタジー調の世界観で繰り広げられるKUF譲り(無双に近い一騎当千系)のアクションゲームで、オーブの力を借りて大量の軍勢を薙ぎ倒していく。アクション重視の作風からか、壮大な世界観に反してシナリオ要素は薄めだが、使えるキャラは初期1人・最終的に7人、人間だけでなくゴブリンもプレイアブルである点が特徴である。Xbox360初期の作品として上質なグラフィック表現を楽しむことができ、やや地味だがそれなりに爽快感のある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはPinar Toprak氏、中村隆之氏、保本真吾氏。スタッフロールにはクレジットされていないが、編曲のみの担当で木島靖夫氏も関わっているようである。Toprak氏は音楽制作会社Media Ventures(現:Remote Control Productions)所属のアメリカ出身の作曲家で、普段は映画音楽の方面で活躍している。中村氏は音楽制作会社ブレインストームの代表で、Q Entertainment製の作品にはルミネスシリーズなどで馴染み深い。保本氏は元グラスホッパーマニファクチュア所属の作曲家である。本作では世界観に見合った重厚かつ緊張感あふれるオーケストラサウンドが揃っていて、一部クラシックからの引用も含まれる。サウンドトラックは主題歌を除く形で1枚組で収録されている。

アーヴァリア山脈で流れるのがこの曲である。キャラによって攻略するミッションは異なるが、概ね物語序盤に訪れるステージである。落石が起こる霧がかった山岳地帯での戦いを彩るにあたって、イントロから耳に残るパーカッションのリズムで焦燥感を煽る。オーケストラヒットを多用したシンフォニックな曲調に、さながらテクノを思わせる精巧なリズムパターンが組み合わさることで、勇壮さと緻密さを両立したハイブリッドな昂揚感を漂わせる。1分14秒からはピアノとコーラス、それに鋭く歪んだ効果音を響かせ、ダークファンタジー然とした間奏を奏でる。1分52秒~55秒あたりで畳みかけるように盛り上げると、続く旋律は激しくも美しい悲壮感を生む。次から次へと焦燥感、昂揚感、悲壮感が押し寄せる一曲である。

不穏だけど気持ちが昂るような、良い感じに大軍を相手取って戦う臨場感が出てますね。