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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1073 『I'm up to my ears ~stage4~』(高萩英樹/EXIT/PSP)

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タイトーがおくる思考型アクション・EXITより、

高萩英樹作曲、『I'm up to my ears ~stage4~』。4面で流れます。

脱出がテーマの2Dパズルアクションとして登場した本作。プレイヤーは脱出請負人のMr.ESCとなり、危険な現場に取り残された人々を非常口へと導くことになる。シチュエーション別に10面×10レベルの全100ステージが用意されていて、炎上や浸水被害にあるギミック豊かな災害現場から遭難者を助け出し、制限時間内に消火器やツルハシなどのアイテムを使ってゴール地点への道のりを切り拓くことが目的である。遭難者にはKIDやADULTといった区分があり、KIDなら狭い隙間を通れるが高い段差は自力では登れない、ADULTは重い箱を動かせる代わりに体格の大きさゆえに脆い床板に乗ると落下してしまうなど、それぞれ取れる行動に差があるため、いかにして彼らに指示を与え誘導するかが攻略の鍵となる。頭の回転が試される緻密なゲーム性と、影絵風の洗練されたアートスタイルが特徴的な手堅い仕上がりとなっている。後にXbox360やDSなどに移植された。

本作の音楽を担当するのは高萩英樹氏。当時タイトーサウンドチーム・ZUNTATAに所属していた作曲家で、Dr.HAGGY名義でも知られる。本作は単独での作曲だが、続編のカンガエルEXITでは複数の作曲家と共同で担当している。本作では脱出ゲームらしい緊迫感を重視しつつ、陰影に富んだ鮮やかなビジュアルに似つかわしいエレクトロ・ファンク系の楽曲群を取り揃えている。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されている。

4面(Stage04-01~04-10)で流れるのがこの曲である。シチュエーションは〈DARK UNDERGROUND〉、周りが暗いため懐中電灯を見つけて視界を確保したうえで、遭難者と脱出路を捜すことになる。自由自在に疾駆する電子音に「ハッ!」と反響する声が響く独創的なイントロから始まり、徐々にパーカッションを交えて緊張感を高めていく。18秒で一旦流れが変わって淡泊なフレーズを奏でると、24秒から浮遊感のあるシンセの主旋律が入る。相変わらず電子音や声が忙しく鳴り響くなか、36秒あたりからは小刻みに震える(さながら幽霊がひゅ~どろどろと出てくるような)変わった音が加わることで、ノリの良さと焦燥感を同時に生み出す。暗闇のなかの脱出任務をスリリングに彩る一曲である。

曲名の up to one's ears は「忙殺」とか「手一杯」とかそういう感じの慣用表現です。曲からも曲名からも急かされているシチュエーションがよく伝わってきますね。