VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1072 『小大名』(浅冨万紀世/天下統一/PC98)

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システムソフトがおくる戦国シミュレーション・天下統一より、

浅冨万紀世作曲、『小大名』。小大名のときに流れます。

上記動画の5:04から7:33まで。

ボードゲームTRPGに造詣が深い黒田幸弘氏が制作に携わった天下統一シリーズの第1作にあたる本作。1551年を起点に、大名家を選んで天下統一を目指すことになる。武将の顔グラフィックをはじめとする美術面・演出面の派手さこそないが、当時として画期的だった点として、一国につき複数の城が存在するため、攻略は国ではなく城単位でおこなわれる。内政はシンプルだが、同盟や合戦に大きくウェイトがあり、特に合戦は戦力差といった大前提に加えて攻撃順のランダム性による運要素も絡むシステムを採用している。CPUが好戦的で手ごわいことで知られ、弱小大名家での攻略難度が非常に高く、そうでなくとも終盤まで自勢力一強の構図にはなりにくい巧妙なゲームバランスが特徴である。乱世の臨場感をうまく表現した硬派な仕上がりとなっている。後に各種PCなどに移植された。

本作の音楽を担当するのは浅冨万紀世氏。マンドリンの作編曲家であることを除きほとんど情報がないが、システムソフト製の作品には本作以外にもロボクラッシュなどに関わっている。本作ではシックでシビアな雰囲気にあわせて、楽曲のほうも概ね落ち着きのある曲調のものが揃っていて、淡々とした質感だからこそ本作の作風によく馴染んでいる。サウンドトラックは20年ほど経ってから、原曲のほかに移植音源も含めて収録したコンプリート盤が登場した。

自勢力が小大名(1国以上を支配し、100万石未満)のときに流れるのがこの曲である。小刻みに響く高音が特徴的なイントロで始まり、2秒足らずですぐさま低音の主旋律が加わると、威厳を漂わせつつもどこかせわしない印象を与える。18秒過ぎ(5:22)で高音が途絶える代わりに、ボン、ボンボン、とゆっくり拍を打つような音色が鳴ることで、冒頭よりもいくらか落ち着いた雰囲気を醸す。が、36秒頃(5:40)からは和音や高音を駆使して勢いづいていき、55秒(5:59)で勇ましくも不穏なサビを迎える。最終的には尾を引くような長音で締め括ると、その裏で再度イントロに回帰する高音フレーズが奏でられる。起伏に富んだ独特な曲調で虎視眈々と天下を狙う様子を彷彿とさせる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。落ち着いているようでせわしなく、栄えるも滅びるも今後次第という空気感や温度感がよく伝わってきますね。