VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1311 『軍王の国』(Revo/ブレイブリーデフォルトII/NS)

www.youtube.com

スクエニがおくるRPGブレイブリーデフォルトより、

Revo作曲、2の『軍王の国』。軍国ホログラードで流れます。

クラシックなJRPGに捻りを加えた作風で知られるブレイブリーシリーズのナンバリング2作目にあたる本作。クリスタルの恩恵を色濃く受けるエクシラント大陸を舞台に、大陸の外から漂着した船乗りの青年・セスは、奪われたクリスタルを取り戻さんとする亡国の王女・グローリアら仲間たちとともに冒険することになる。3DSで展開してきたシリーズとしては初の単画面向けの作品で、ビジュアルの質感やキャラの頭身等に大きな変更はないが、ハード移行に伴う各種ブラッシュアップや画面構成の見直しが図られている。シナリオ面ではパーティメンバーが少年少女ではなく大人である点、全体的に堅く王道に徹した路線である点から、シックでシリアスな雰囲気が強まった。これにあわせてゲームバランスも骨太な調整が施されている。戦闘システムは従来通りターン制・複数行動あり・ジョブとアビリティの組み合わせが肝となる仕組みだが、新たに敵が積極的に反撃や妨害をおこなうようになった。そのため、行動の見極めやそもそものレベル上げなど、これまで以上に戦略性や対処能力を試される内容になった。シリーズ特有の歪なトーンは抑えめだが受け継ぐ部分は受け継いでいて、正統派寄りにチューニングされた仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのはRevo氏。自らが主宰する音楽ユニット・Sound HorizonおよびLinked Horizonを軸として各方面で活躍するサウンドクリエイターである。ブレイブリーシリーズには1作目以来、本作で再び起用された形となる。本作では前作までと比べてざっくりまとめると、物語の中身はハードに、作品全体のアクや癖はマイルドに調整されたが、音楽性に関しては引き続きシリーズの遺伝子を受け継いだものが揃っている。ダークファンタジーの雰囲気を捉えたアコースティック系、オーケストラ系、ロック系を中心に、素朴さと激しさ、神々しさと禍々しさなど、一見すると相反する性質を備えつつも統一感のある流麗な楽曲が多く用意されている。また、作中の天候や状況に応じて曲がインタラクティブに変化する仕掛けも存在する。サウンドトラックは初回生産版と通常盤があり、前者はCDの枚数を1枚追加してアレンジや未使用曲も収録されている。

軍国ホログラードで流れるのがこの曲である。覇を唱え、他国への征服に乗り出す強大な軍王のもとで栄える大陸西方の国で、土地自体は昏く痩せた不毛の地だが、異様な迫力を放っている。曲冒頭から打楽器、ギター、アコーディオンが撚り糸のように寄り合って独特な悲壮感を生み、8秒からバイオリンの美しい音色が加わることで哀愁がかった響きが強まっていく。軍国ということもあって、打楽器の鳴らし方は行進曲を彷彿させる規則正しさがあるが、主として用いる楽器は吹奏ではなく弦楽器中心のアコースティックな編成である。それゆえ、全編を通して行進曲らしい勇壮な印象よりも、弦楽器の持ち前の優雅さが強調されている。しばらくは中低音域で蛇行するように旋律を紡いでいくが、43秒から徐々に高音を織り交ぜて盛り上がっていく。ここにきても主旋律は憂鬱な響きを帯び続けるが、後ろで随伴するオーケストラは華やかさの絶頂を迎える。これに誘発されて1分から始まる二度目にして本番のサビでは、主旋律もぐっと力を込めて絢爛華麗な演奏を披露する。サビが終わるとギターとアコーディオンの魅惑の組み合わせが中心となって間奏を彩り、やがて再びバイオリンが加わってループへと綺麗に繋がっていく。むせ返るほどに凛々しい一曲である。

曲名だと形式揃えられてますが、作中だと他の国は〈○○(二字熟語)の国〉と表記されるのに対し、ホログラードだけあえて軍国のみという不揃いな表記だったのがよく印象に残ってます。その異質さと簡潔さが国の雰囲気に合ってますね。