セガがおくるアクション・輝水晶伝説アスタルより、
幸崎達哉・前田龍之作曲、『暗闇の中で』(仮称)。2面で流れます。
セガサターン初期のオリジナル作品として登場した本作。水晶の世界・クォータリアを舞台に、宝石から生まれた怪力の主人公・アスタルは、相棒の少女・レダを悪の手先にさらわれたことを受け、彼女を取り戻すべく戦うことになる。全16面構成の2D横スクロールアクションで、童話や児童向けアニメのような語り口と画作りが徹底されている点が特徴である。グラフィックは平面的なドット絵や止め絵が中心で、ハード性能を鑑みても目新しさはないが、鮮やかな色使いや見映えのする演出、適度に楽しいギミックなど、随所で丁寧なつくり込みが窺える。アスタルは持ち前の怪力を活かし、敵を掴んで投げたり、地面叩きで足場を揺らしたり、深呼吸からのブレス攻撃で吹き飛ばしたりすることができる。旅のお供として鳥が同行し、ボタンで指示を出せば敵を攻撃したり遠方のアイテムを取ってきたりしてくれるほか、2人同時プレイ時には2Pキャラとして操作することが可能である。全体的にボリュームがすくなく質素な印象が強いが、小粒ながらほのかに光る仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは幸崎達哉氏と前田龍之氏。いずれもセガに所属する作曲家である。このうち前田氏は本作の主題歌の作編曲も手がけている。両名とも本作のスタッフロールにおいて音楽/効果音欄で一括でクレジットされているため、具体的にどちらか一方が作曲担当だったのか、共同で制作にあたったのかは判然としない。本作は煌びやかでメルヘンチックな作風にあわせて、シンセパッドやマレット系の幻想的な音色がよく使われている。が、意外と王道ファンタジー風のヒロイックなオーケストラサウンドや、エレキギターの効いたハードでプログレッシブな曲調も多く、場面ごとに多彩な楽曲を楽しむことができる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
2面「暗闇の中で」で流れるのがこの曲である。ここは定期的に光が差し込んだり消えたりする鍾乳洞で、頭上には蝙蝠の群れが通るほか、暗いときは本当に画面が真っ暗になって主人公の眼光だけが浮かび上がる。そうしたなか、情感あふれるリュートの音色によってたちまちに忘我の境へと誘う。美しい旋律を取り巻くようにシンセやシェイカーが興を添えていて、23秒からメインフレーズが入る頃にはもうすっかり夢心地に浸らせてくれる。48秒でさらに神秘的なバックコーラスが目立ち出し、ただでさえ素敵な空気に包まれているなかでますます抗しがたい魅惑的な雰囲気が漂うようになる。1分12秒で流れが変わると、トライアングルやタンバリンなども加わって様々な音色をきめ細やかに散りばめる。暗闇に魅入られつつ、光を見出さんと進む状況にぴったりな一曲である。
この曲にはなにか精霊か小妖精か宿っていそうな感じがします。