東芝EMIがおくる恋愛シミュレーション・ずっといっしょより、
橋本彦士作曲、『とどかない憧憬』。南景子のテーマとして流れます。
上記動画の22:30から25:51まで。
イラストレーターの渡辺明夫氏がキャラデザインを手がけた恋愛シミュレーションとして登場した本作。両親の都合で転校して一人暮らしを始めた主人公は、偶然か手違いか同じ部屋で同じ高校の女の子と一年間同居し、ドキドキの高校生活を送ることになる。開始時に3人のヒロインのいずれかを選択し、その子を同居人兼攻略対象として進めていく。家出ワガママお嬢様の桜子、親戚でスポーツ少女の智香、内気で純情な美樹、どの子も王道に見えて割と癖のある一面を持っていて、実力派声優陣による感情豊かな言動を楽しめる。授業、家事、バイト、デートなど、一日ごとに5枠の時間割を設定して毎日を過ごすなかで、ときには授業をサボったりデートをダブルブッキングしたりして周囲を巻き込みながら青春を味わうことができる。好感度と関連して、サブキャラ含む各登場人物には喜・怒・哀の感情値があり、日々のイベントや制限時間付きで答える選択肢の結果に応じて上下する仕組みである。怒らせたり哀しませたりすることも成長要素に組み込まれているため、あえて地雷を踏みに行くのも一つの手である。総じて手堅さと味わいを兼ね備えた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは橋本彦士氏。フリーランスの作曲家で、80年代からゲーム方面で活動していて楽曲・効果音・データ制作などサウンド全般を担っているベテランである。東芝EMI製の作品には本作以前にマスターオブモンスターズシリーズの一作に携わった経験がある。本作では日常と恋愛を彩るシンセポップやチル系の親しみやすい楽曲群が揃っている。季節やキャラごとにテーマ曲が用意されていて、どれも穏やかさと煌めきを両立した耳心地の良さがある。サウンドトラックには主題歌やジングルも含めて収録されている。
南景子(みなみ・けいこ)のテーマとして流れるのがこの曲である。主人公のバイト先となる喫茶店の店長の妹で、ショートヘアがよく似合う二十歳の大学生である。さっぱりした性格で年下をからかう趣味があり、そんな彼女のしたたかさを表現しているのがこの曲である。フュージョン系のリラックス感のあるリズム感のもと、ベースやエレクトリックピアノ、シンセパッドの音色が絶妙に心地良く響く。ただ心地良いだけでなく、14~16秒(上記動画の22:44~46)などできらりと存在感のある高音を奏でることで刺激的なムードを醸し出している。22秒(22:52)からラッパの主旋律が加わると、その音色は高らかに盛り上がりつつもほのかに大人びた感傷を帯びている。特に42秒(23:12)以降、長めに音を伸ばして演奏するくだりはシンプルだがとても粋で、フレーズの後半に満を持してシンセベルを鳴らすことで妙趣を添えている。1分5秒(23:35)からはますます高らかに旋律が鳴り渡り、最後まで尽きぬ色香を纏い続ける。かなわない魅力を湛えた一曲である。
出だしの鳴らし方、なんともほろ苦く侮りがたい感じがよく出ていてすごく素敵ですね。曲名もよく合っていると思います。