VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1573 『Parts Shop』(光田康典/機甲装兵アーモダイン/PS2)

www.youtube.com

大宮ソフトがおくる運営&戦略シミュレーション・機甲装兵アーモダインより、

光田康典作曲、『Parts Shop』。編成メニューの物資補給画面で流れます。

カルドセプトシリーズで知られる大宮ソフトが開発した本作。火星に入植した人類と地球との間で争いが絶えぬ世界を舞台に、主人公は人型兵器・アーモダインを擁する独立機動小隊の指揮官となって侵略してきた火星軍に対抗することになる。ミリタリーSFの濃密な世界観と、主人公がパイロットではなく部隊運営を担う指揮官の立場である点が特徴である。運営パートと戦略パートに分かれていて、前者は戦前の補給や軍事訓練をおこない、後者は戦場に出撃して隊員たちを指揮していく。隊員たちには純粋な戦闘パラメータ以外にも性格や主人公への信頼度、さらには隊員同士の相性などがあり、集団生活を送るなかで訓練の部屋割や会話での交流によってどう成長するかが変わってくる。戦略パートは先に各ユニットに行動方針を伝えてから動き出すプロット制で、隊員たちは信頼度に応じて指揮に従ったり従わなかったりするため、不確定要素も想定した大局的なマネジメントが肝要である。そのうえ手塩にかけた隊員でも一定のランクに到達すると本部送りになって除隊するため、新人の受入体制を整備しつつ、誰をどのタイミングで稼がせるか見極め、中長期的に戦力を維持できるようサイクルを回す必要がある。そのゲーム性ゆえ地味で煩雑な印象が強いが、硬派な軍記モノを部隊運営という切り口から紐解くことができる意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは光田康典氏。音楽制作会社プロキオンスタジオの代表である。長年ゲーム音楽に携わってきたなかでも大宮ソフト製の作品には初参加で、ひいてはシミュレーションというジャンル自体の作曲にも初挑戦のようである。本作は作風全体が80年代のSFロボアニメを彷彿とさせるところがあり、音楽もそれに合わせて80年代的なロックサウンド、そしてアニメ劇伴のような重厚さのあるオーケストラサウンドを志向している。そのためシミュレーションと言って連想する淡々とした曲調よりも、戦争ドラマ・人間ドラマらしい密度とメリハリのある曲調を軸に据えている。サウンドトラックは2枚組で収録されている。

編成メニューの物資補給画面で流れるのがこの曲である。主にアーモダインを換装したりパーツやアイテムを購入したりするショップ的な立ち位置だが、物的のみならず人的資源の補給という観点でメンバーを募集することもできる。イントロから静かに弾むシロフォンと静かに這うシンセの組み合わせが印象的で、9秒頃から本格的に伴奏を伴うようになると幻想的であると同時に渋くストイックな雰囲気を漂わせる。27秒でエレキギターの荒く力強い音色が加わるとインダストリアルミュージック的なノイズ感が出始め、ただの店ではなく軍の工廠や兵器庫らしい鉄と血の臭いが感じられるようになる。46秒から冒頭のフレーズに戻るが、伴奏にチロチロと駆けずり回る音色が加えられていて、実際にループに入るのはメインフレーズが始まる55秒からである。静かなようで激しく、渋いようで弾んだ聴き心地のある一曲である。

編成メニューだとハンガーで流れる『Powder and Shells』もすごく好きです。分厚いオーケストラに、二胡ではないのかもしれないけれど二胡っぽく聴こえる主旋律がとてもよく映えます。あわせてどうぞ。

www.youtube.com