日本一ソフトウェアがおくる異能×学園RPG・シカトリスより、
田中潤・HIRO.K作曲、『飛躍の季節』。季節が夏のときの授業パートで流れます。
日本一ソフトウェア製の完全新作として登場した本作。何らかのきっかけで異能に目覚める者が存在する世界を舞台に、異能使いで構成された国家機関の元隊員である主人公は、少年少女たちの特殊学級・RAUT三〇二分隊の教師となって教え導くことになる。悲惨な展開もあるが基本的には王道に沿ったジュブナイル系の作風が特徴で、事情を抱えた7人の生徒たちを授業や外出を通じて育成し、有事の際には出動して戦闘を繰り広げていく。大まかに分けて育成シミュレーション風の授業パート、アドベンチャー風の会話パート、コマンドバトル形式の戦闘パートがある。授業パートでは得意不得意や専攻などを加味して週間スケジュールを組み、生徒たちのパラメータを伸ばしたりスキルを習得させたりすることができる。会話パートは重要なイベントはもちろん、年中行事や寮生活のやりとりなど細々とした日常描写を楽しめる。戦闘パートは直接指示するのではなく指揮するような立場で、ターン開始時に生徒たちの行動提案を取捨選択する形式を取っている。一戦一戦が重く強気なゲームバランスで、スキルや相性の兼ね合いを考えて立ち回る必要がある。全体的にグラフィックや演出面は簡素で侘しさがあるが、コンセプトを活かした丁寧な仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは田中潤氏とHIRO.K氏。いずれも音楽制作会社CUBEに所属する作曲家である。このうち田中氏は本作以前に同じく日本一ソフトウェア製の作品でクリミナルガールズ2に携わったことがある。本作では現代的で瑞々しさのあるスピーディーなエレクトロニックサウンドを中心としつつ、日常を彩るBGMとしてピアノやギターを用いたソフトなもの、一転して戦闘BGMとしてエレキギターやロックバイオリンを用いたハードなものが用意されている。よく耳にする授業パートのBGMが季節によって変化するなど、この手のジャンルの醍醐味を押さえた工夫が施されている。サウンドトラックはブックレット付きで2枚組で収録されている。
季節が夏(6月・7月・8月)のときの授業パートで流れるのがこの曲である。出だしからギターとピアノの溌剌とした演奏が気持ち良く、胸いっぱいに夏のワクワク感が広がる。しばらく似通ったフレーズを繰り返して眩しい雰囲気を存分に漂わせた後、32秒にはスチールパンの音色を取り入れてますます陽気な印象を与える。41秒にはマリンバも加わりフレッシュな響きを添え、ギターとうまく組み合わせながら爽やかなアンサンブルを紡いでいく。1分4秒以降はギターに代わってピアノが主役を受け継いでボサノヴァ風の洒落た演奏を披露する。とりわけ1分28~35秒でマリンバを中心としてトレモロを利かせて小刻みに揺らし、続く1分36秒から再びギターが主役に戻るくだりは、一際強い清爽感に満ちている。活きが良く伸び伸びとした一曲である。
明るさとリラックス感のバランスが良くて聴きやすいですね。