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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1168 『流れ星ひとつぶ』(佐藤天平/マール王国の人形姫/PS)

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日本一ソフトウェアがおくるミュージカルRPGマール王国の人形姫より、

佐藤天平作曲、『流れ星ひとつぶ』。ゲームオーバーの際に流れます。

日本一ソフトウェアの初期の代表作であるマール王国シリーズの第1作にあたる本作。人形と心を通わすことのできる少女・コルネットは、悪い魔女にさらわれてしまったマール王国の王子さまを救うべく、お供の人形・クルルと一緒に旅立つことになる。おとぎ話調のメルヘンチックな世界観と、物語の合間に挟まれるミュージカル風の演出が特徴で、童話と歌とお芝居の雰囲気を存分に楽しむことができる。戦闘は人形や仲間モンスターを含めて最大4人まで参加可能で、ユニットの移動の概念を取り入れたシミュレーション形式を採用している。温かみのある作風にあわせて全体的なゲームバランスやテンポも緩めで、冒険や戦闘を軸とする通常のファンタジーRPGとは一味違う、世界観や演出に比重を置いた仕上がりとなっている。後に廉価版が登場したほか、DS向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは佐藤天平氏。フリーランスの作曲家で、本作を担当したことをきっかけに以降の日本一ソフトウェア製の作品に数多く携わることになる。ミュージカルを題材にしていることから、本作では音楽が大きな役割を果たしていて、主題歌はもちろん挿入歌など多数のボーカル曲が用意されている。歌もの以外の楽曲も煌びやかな雰囲気が徹底されていて、ときに明るく、ときに勇ましく、ときに感傷的なサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、一部収録のものやボーカルのみを収録したものが存在するほか、スピンオフのマールDEジグソーの限定盤に本作含めシリーズ楽曲を収録したものが付属されていた。

ゲームオーバーの際に流れるのがこの曲である。ゲームオーバー時の演出は簡素なものだが、短いジングルではなく長く聴き入ることができる曲が用意されている。初めの5秒ほどで徐々に音階を下って敗北のムードを印象付けると、以降はしっとりと労わるような優しいメロディーが紡がれる。ハープやギター、笛など、切なくも柔らかい響きを帯びた楽器をふんだんに用いることで、負けてしまった哀しみに寄り添うような温かい雰囲気を漂わせる。一連の笛のパートが収束すると、45秒頃からストリングスを交えて儚くも力強い盛り上がりをみせる。さらに1分半過ぎにはピアノのフレーズが待ち受け、これまで以上にどっぷりと余韻に浸らせてくれる。不意に訪れた終幕をどこまでも美しく繊細に彩る一曲である。

曲名に何とも言えないセンチメンタルなニュアンスがあっていいですね。