アソビモがおくるMMORPG・トーラムオンラインより、
小山健太郎作曲、『淵底の遺跡』。淵底の遺跡で流れます。
イルーナ戦記の流れを継ぐアプリ向けの基本プレイ無料・アイテム課金型MMORPGとして登場した本作。過去に起きた大変動によって人も大地も離合集散して入り混じる世界を舞台に、プレイヤーは冒険者となって自由気ままな旅を繰り広げることになる。自由度の高さと正統派ファンタジーの作風を押し出していて、イルーナ戦記の世界観を踏襲しつつも独立して遊べる馴染みやすい雰囲気がある。顔や髪型などパーツごとに細かくカスタマイズ可能で装備のコーディネートによる着せ替えも充実したキャラメイクの楽しさと、職業という枠に囚われず武器もスキルも好き放題に組み合わせられるプレイスタイルの幅広さが特徴である。戦闘は射程内のターゲットを自動攻撃しつつ適宜スキルを手動発動させるセミオート式で、設定次第で回避や防御の動作をマニュアルに切り替えてアクションRPG的な駆け引きを楽しめる。クエスト、素材集め、ギルド、マイルームなど定番の要素が揃っていて、斬新ではないものの昔ながらの王道さと居心地の良さを味わうことができる。総じて長期運営らしく安定した仕上がりとなっている。後にSteam版が配信された。
本作の音楽を担当するのは小山健太郎氏と森田祐司氏。小山氏はかつてセガに所属していたことで知られる作曲家で、アソビモ製の作品には本作以前にぷちっとくろにくるでも作曲している。森田氏は音楽制作チーム・JamzTone STUDIOの代表で、アソビモ製には本作や本作の前身であるイルーナ戦記をはじめ数多く携わっている馴染みの作曲家である。本作では繊細で壮大で高純度なファンタジーサウンドが揃っていて、ギターやフルート、ピアノなどシンプルに聴きやすいアコースティックな曲調の他にも、シンセやエフェクトなどを駆使した電子音楽寄りな曲調も用意されている。なかにはイルーナ戦記からのアレンジが存在する。サウンドトラックについてはイベント限定販売で一部楽曲を収録したものがあるほか、アソビモが公式で配信している音楽アプリ・ASOBIMO MUSICに本作の楽曲が含まれる。
淵底の遺跡で流れるのがこの曲である。始まりの街であるソフィアの街から程近いところにある地下炭鉱跡地である。仄暗い坑道のイメージに反して、流れる曲は出だしから強い清涼感に満ちている。シャカシャカ刻まれるリズムに爽やかなシンセ、柔らかく寄り添うアコースティックギターの組み合わせが絶妙に気持ち良く、12~13秒で本格的にドラムンベース風の勢いを帯びるとますます気持ち良さが加速する。その後も快いペースを保ちながら進んでいき、1分3秒あたりからサビと思しき華やかなフレーズに突入する。その様子はまるで全方位から一斉に音の波が押し寄せてくるかのようであり、聴いていると圧倒されると同時に解放されるような感触がある。フレーズ終わりの1分28~31秒で短く収束して鮮やかに区切りを付けて瞬時にループに突入する流れは見事で、どこまでも清々しい気分に浸らせてくれる。底知れぬ深淵の暗さよりも、底を目指して進む前向きさが感じられる一曲である。
この曲の他にも『マルバロの森』とか『魔女領の森』(イルーナの『魔女狩りの森』のアレンジ)とかがおすすめです。あわせてどうぞ。