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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1598 『聖白騎士』(九十九百太郎/鋼鉄霊域 スティールダム/PS)

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テクノソフトがおくる対戦格闘3Dシューティング・スティールダムより、

九十九百太郎作曲、『聖白騎士』。蒼馬のテーマとして流れます。

異形の兵器たちが戦う対戦アクション・リヴァーシオンの系譜を継ぐ本作。霊牙と呼ばれる魂を物質化させた鎧の秘法を受け継ぐ東端の帝国・朧国を舞台に、霊牙使いの闘士たちが皇帝主催の武闘大会でしのぎを削ることになる。8人のプレイアブルキャラによるロボットシューティング風の対戦格闘ゲームで、3D空間で射撃や旋回、ホバリングなどを駆使しながら戦っていく。オリエンタルな世界観やキャラデザインが特徴的で、使用するキャラによって立ち回り方や発動できる技が大きく異なる。コマンド入力に加えて索敵や高速移動など細かな操作が多く、前作から新たに旋回しながら索敵する動作が導入されたものの、旋回速度が遅いため敵を捕捉するだけでも相応の慣れを要する。粗削りではあるがボイス量が充実していて、背景設定や全体の雰囲気には独自の趣がある。また、総じて雑味はあるが意欲的な仕上がりとなっている。後にセガサターンに移植された。

本作の音楽を担当するのは九十九百太郎氏。当時テクノソフトに所属していた作曲家である。リヴァーシオンに引き続き本作でも単独で作曲している。氏の持ち味であるメタリックな曲調は前作から変わらず健在だが、本作では一新された世界観に合わせてアジアンなテイストを取り入れたり、ロボットものを意識したスピーディーでヒロイックな響きを強調したりしている。オーケストラヒットを盛大に用いたり、鼓や大太鼓を打ち鳴らしたりして迫力満点のサウンドを生み出している。サウンドトラックについては前作と合わせて収録したもののほかに、後年には本作単体で一部楽曲のアレンジ付きで収録されたものも登場した。

蒼馬のテーマとして流れるのがこの曲である。蒼馬は長い金髪がよく目立つ異邦人で、軽薄そうに見えるが亡国の騎士である。侵略に遭った祖国を奪回すべく霊牙を会得し、腕試しのため武闘大会に参加している。纏う霊牙は槍を携えた白騎士で、リーチの長い突進攻撃を得意とする。周囲とは出自や風采が異なるキャラらしく、思い切り西洋ファンタジーに寄せた曲調が印象的である。手始めにコーラスやオルガンをふんだんに用いてゴシック系のダークでシリアスな雰囲気を漂わせ、やがてエレキギターが加わると急激に勢いづいていく。そのままずっとギターの独壇場が続くのかと思いきや、実際には25秒から加わるピアノが主役を務める。ただダークなだけではない、清く澄んだ悲愴感を帯びるようになり、さらに45秒からグルーヴィーなオルガンを伴って盛り上がっていく。1分5秒で山場を迎えると一際ドラマチックな展開をみせ、1分17秒で潔く主旋律をシンセに託してサビに突入する。サビのメロディーは王道のキャッチーさがあり、紆余曲折を経てなお貫く騎士の生き様が活き活きと表現されているかのようである。不撓の精神と美学が宿る一曲である。

一見ダークな感じから始まってやがて光に転じていく流れが格好良いですね。