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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1603 『Main Theme』(Jeremy Soule/Dungeon Siege/PC)

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Gas Powered GamesがおくるアクションRPG・Dungeon Siegeより、

Jeremy Soule作曲、『Main Theme』(仮称)。メインテーマとして流れます。

アメリカのゲーム会社・Gas Powered Gamesの代表作にあたる本作。かつて滅んだ大帝国の跡に築かれたKingdom of Ehbを舞台に、一介の農婦である主人公は、Krugと呼ばれる怪物の襲撃をきっかけに、やがて仲間たちとともに大いなる因縁と争いに身を投じることになる。非常に高密度で臨場感のあるフル3Dの中世ハイファンタジーの世界観と、プレイ中に一切ロードを挟まず探索も戦闘も進められるシームレスなゲーム性が特徴である。最大8人のパーティで旅するなかで、あらかじめ定められたクラスで役割分担する形式ではなく、接近や遠隔武器、補助用の自然魔法や攻撃用の戦闘魔法など、各種スキルを使い込むことでおのずと役割と立ち回りが形成されていく。キャラ自体にレベルの概念はないが、スキルの習熟に応じて基礎能力値も強化されるため、プレイスタイルを通じてキャラの成長に還元される仕組みを取っている。物語描写は薄いが、多彩なロケーションや自然環境による冒険の醍醐味、そしてアイテムの豊富さとランクによる性能差などによるハクスラの醍醐味が充実している。また、マルチプレイ用に専用のマップも用意されている。総じて当時として画期的で今なお新鮮な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはJeremy Soule氏。アメリカ出身のフリーランスの作曲家で、ゲーム音楽方面では本作および次作以降も含めたシリーズが代表作の一つだが、他にもハリーポッターのゲーム化作品群やThe Elder Scrollsシリーズなど有名どころを多く担当している。また、本作では氏の弟のJulian Soule氏も一部作曲を手がけている。本作の音楽は重厚で没入感あふれる本格的なオーケストラサウンドを中心に、全体的に暗めで威圧的でアンビエント寄りな印象がある。なかには象徴的なメロディーを持つ楽曲もあり、緩急をつけて盛り上げてくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

メインテーマとして、ゲーム開始直後のナレーション明けの第1章などで流れるのがこの曲である。まずは濃密なブラスオーケストラを軸として、力強く打ち鳴らされる太鼓やきめ細やかに奏でられる弦楽器を添えて盛り上げていく。7秒頃からにわかにテンションが高まり、一際迫力満点なハーモニーをもってイントロのフレーズを締め括ると、後を継ぐようにピアノが聴こえ出す。太鼓や管楽器に合わせるように、ピアノも打楽器に近い立ち位置で規律正しく音色を紡ぐことで、どっしりと響く揺るぎない実在感を生み出している。25秒過ぎからコーラスとブラスが勇壮で昂揚感あふれる合奏を披露するようになり、非常に派手でドラマチックだが変わらず揺るぎない芯の強さを感じさせる。40秒以降から木管や弦を交えて徐々に収束し、曲が完全に終結すると間を置いて再び冒頭から繰り返される。これから始まる冒険への期待と興奮を大いに煽りつつ、浮かれることなくしっかり気を引き締めてくれる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。生まれながらの英雄ではないけれど旅立たねばならない主人公の境遇によく合っている曲なのではないかと感じます。