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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#107 『The end of messenger』(阿保剛/STEINS;GATE 0/PS3・PS4・PSV)

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5pb.Nitroplusがおくる想定科学ADV・STEINS;GATEより、

阿保剛作曲、0の『The end of messenger』。バッドエンドで流れます。

STEINS;GATEの正統続編として登場した本作。幾重にも分岐し得る結末のうち、大切な人である牧瀬紅莉栖を救えぬままに最も陰鬱な世界線を選び取ってしまった主人公・岡部倫太郎は、紅莉栖の記憶をもとにつくられた人工知能アマデウスとの出会いをきっかけに、さらに運命に翻弄されることになる。続編は続編でも、前作のトゥルーエンドとは異なる結末を迎えた場合のその後を描いた派生的な続編である。基本的なゲーム性は受け継いでいるが、キーアイテムとなるガラケースマホになるなど、時代に寄り添う形でシステム面が変化している。持ち味のハードSFな作風を活かした重厚で濃密なシナリオは本作でも健在で、新旧キャラクターが紡ぐ、後悔と失意とわずかな希望が入り混じった新たな可能性の物語を堪能することができる。シュタゲらしい独特な雰囲気を再び味わえる仕上がりとなっている。後にPCやXboxOneに移植されたほか、一連のスピンオフ作品群をまとめて収録したものがスイッチに登場した。

本作の音楽を担当するのは阿保剛氏。5pb.(現MAGES.)に所属する作曲家で、前作に引き続き作曲している。ボーカル曲に関しては、こちらも前作同様にMAGES.の志倉千代丸氏をはじめ、MANYO氏や大島こうすけ氏らが参加しており、無印時代に築き上げた世界観をそのまま引き継いだサウンドが揃っている。また、前作の楽曲をアレンジしたものや、本作の物語の鍵を握るモーツァルトのクラシックアレンジなども存在する。サウンドトラックには主題歌やメインテーマの特別なアレンジも含めて収録されている。

バッドエンドで流れるのがこの曲である。本作のメインテーマ『Messenger -main theme-』のアレンジである。深く、奈落の底へと誘うような重苦しいピアノの音色から始まり、そこにゆっくりと、徐々に盛り上がるように添えられるストリングスの音色が、次いでサビの部分で奏でられる笛の音とトライアングルの金属音にメランコリックな印象を強めさせる。さらに同じ主旋律をストリングスがカバーすることで、心が張り裂けんばかりの失意を何重にも表現している。諦観に満ちた世界線、そこで勇気を振り絞って踏み出した一歩さえもが報われなかった最悪の結末にふさわしい、最上の悲哀を滲ませた一曲である。

メインテーマのほうもかなり暗めな曲調なのですが、この曲にはどこか、暗さの限界を凌駕した真の絶望が潜んでいるような気がします。『Messenger -main theme-』、あわせてどうぞ。

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