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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1332 『惑星ボンボーン』(寺田創一/スペースフィッシャーメン/PS2)

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SCEがおくるアクションアドベンチャー・スペースフィッシャーメンより、

寺田創一作曲、『惑星ボンボーン』(仮称)。同名の惑星で流れます。

ダビつくシリーズで知られるランド・ホーが開発し、SCEが販売した本作。不思議な宇宙魚たちが生息する宇宙の片隅を舞台に、釣り人の主人公はヌシと呼ばれる伝説の巨大宇宙魚を求めて釣りまくることになる。スペースフィッシングアクションアドベンチャーと銘打つ通り宇宙で魚を釣るゲームで、アメコミ風の派手なグラフィックで彩られる見た目も性能も千差万別な宇宙魚たちが魅力である。宇宙魚は画面を覆うドデカいサイズのもの、空を飛んだりミサイルを撃ってきたりするもの、そもそも魚じゃなさそうな見た目のものなど、豪快で奇怪でB級感漂うものが140種類用意されている。それにあわせて釣りの操作も、狙いを定めてルアーを投げた後は、ロッドで攻撃を加えたり獲物の反撃をガードしたり、スティックをぐるぐる回してリールを巻いたりするなど、アクション要素・格闘要素の強いつくりとなっている。環境の異なる惑星(釣り場)で釣りをして魚を収集するコレクション的な遊びに加えて、内容はシンプルだがシナリオに沿って進める宇宙冒険活劇風のアドベンチャー要素も存在する。ヘンテコだけど愛嬌があって遊び甲斐のある意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは寺田創一氏。日本におけるハウス・ミュージックのパイオニアとして知られる作曲家で、SCE製の作品には本作のほかにもサルゲッチュシリーズなどで馴染み深い。本作ではハウスやテクノを軸としたとても彩り豊かでセンスあふれる楽曲が揃っている。インパクト絶大なタイトル曲をはじめ、シンセやピアノ、口笛、ハーモニカ、エレキギターなど様々な楽器を組み合わせて、作風に合ったファンキーなものから、やけにクールなドラムンベースクラシック音楽の引用、惑星によってはオリエンタルだったりウエスタンだったりデジタル寄りだったりなんでもありの豪華なサウンドを楽しむができる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

惑星ボンボーンで流れるのがこの曲である。星全体が深い霧に覆われていて、見通しの悪さゆえに沈没する宇宙船が多く、至るところに淡い白色に包まれた船の墓場や竜骨などが散らばっている。そんな残酷とも神秘的とも言える光景を彩るにあたって、惑星の名称通りボン、ボンと鳴る特徴的なシンセプラック系の音色で始まり、パッドやクワイアを交えて浮遊感を強めていく。12秒で民謡風の合成音声が加わると、その摩訶不思議なアカペラ風の響きはさながらお経や鎮魂歌を想起させる。そのまましばらく聴き進めて48秒でドラムビートが勢いづくと、ここからはしっかりリズムを刻んで歌声と打音とが響き合うようになる。奏でられるメロディーはそう変わらないが、浮世離れした印象が強かった前半部分に比べて、後半部分はもうすこし現実に近付いて目の前の釣りに集中できそうな印象を与える。1分半手前でループに突入すると、アカペラ風→ドラム合流の心地良い流れを再び体験できる。じんわりと直に伝わってくる迫力を持つ一曲である。

すごく心奪われる曲ですね。これを聴いた後だとギャップが激しいですが、せっかくなのでタイトル曲もあわせてどうぞ。

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