VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1357 『QUEEN IN THE DARK NIGHT』(荒川憲一/Rusty/PC98)

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C-labがおくるアクション・ラスティより、

荒川憲一作曲、『QUEEN IN THE DARK NIGHT』。1面で流れます。

PC98用の超本格アクションと銘打って登場した本作。夜と獣魔が蔓延るトランシルバニアの地を舞台に、辺境の村々で娘たちが消える事件が多発し、かつて封印されたはずのモンテカルロ侯の復活が囁かれるなか、獣魔ハンターのラステア・スプリンクール、通称ラスティが立ち向かうことになる。全10面構成の2D横スクロール探索型アクションで、吸血鬼伝説をベースにした中世ヨーロッパのゴシックホラー風の世界観と、女性主人公をはじめとする美女を押し出した作風が特徴である。道中では鞭を使って攻撃したりぶら下がったりしながら制限時間内に鍵を見つけて奥を目指し、ステージの最後にはボスと戦い、止め絵のアイキャッチを挟んで次の面へと進んでいく。通常の攻撃手段のほかにボムやシールド、相棒のフクロウの手助けなど、取得アイテムに応じた特殊アクションも発動できる。基本的にジャンルのフォーマットに則った従順で追随的なつくりだが、ハード性能的にアクションが不向きとされるPC98にしては堅固な出来に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは荒川憲一氏、梶原正裕氏、高見龍氏。荒川氏は当時、梶原氏と高見氏は現在もフリーランスで活動していて、いずれも90年代前後のPCゲームや同人界隈を支えた作曲家として知られる。本作では梶原氏が自作したFM音源ドライバー・PMDを用いた作品の一つであり、「同時発生6音以上+PCMの豪華サウンド」は本作の目玉要素に挙げられている。ダークファンタジーらしい荘厳で重厚で、ときに美しくときに勇ましい、表現力豊かな楽曲が取り揃えられている。サウンドトラックは長らく未発売だったが、海外で数量限定のLPレコードが発売されたことがある。

1面で流れるのがこの曲である。夜の帳が下りる頃、辺境の村から程近い廃屋を通り抜けていくことになる。迫力あるオルガンの音色を用いた大仰なイントロによって、第一印象で中世ホラーらしい雰囲気を目一杯植え付けた後、4秒から一転してヒロイックでファンタジックな旋律を紡ぎ出す。高音を中心にして凛としたメロディーを披露するなかで、22~24秒で細かく3連符で刻むと、それに呼応するように26~28秒で低音部がリズミカルに唸ってみせる。続く30秒や33秒では象徴的な鐘の音が鳴り渡り、さらに34秒からは中低音でグルーヴ感のある旋律を奏で、46秒からはオルガンがトリルを交えながら華やかに響く。そうやって次々と自在に音色を操ることで万遍なく見せ場を配置していて、曲を通して力強い盛り上がりを維持し続けている。高音の鮮烈な聴き応えに負けず劣らず、たとえば1分22~33秒の低音の間奏は非常に渋く痺れるような響きを帯びていて、音の一つ一つが抜群の格好良さを誇る。闇夜のなかで鋭く光るような一曲である。

なんて格好良いのでしょう。心臓に突き刺さってそのまま貫通しそうなくらい好きです。