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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1416 『セイントヘヴン』(篠田元一/新創世記ラグナセンティ/MD)

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ネクステックがおくるアクションRPG・新創世記ラグナセンティより、

篠田元一作曲、『セイントヘヴン』(仮称)。セイントヘヴンなどで流れます。

メガドライブ向けのオリジナルRPGとして登場した本作。かつて世界に光が満ちてモンスターたちの多くが息絶えるも、再び勢力を取り戻して人間の領域に侵攻しつつある時代を舞台に、14歳の誕生日を迎えた主人公は剣士となって旅立つことになる。見下ろし型のいわゆるゼルダライクなゲーム性が特徴で、温かく色彩豊かなグラフィックと、動物と会話したり力を借りたりするメルヘン風味の独自要素が目を惹く。アクションは剣を中心とし、剣を振る近接攻撃に加え、剣をとばして遠くの敵を攻撃したり謎解きに応用したりすることができる。仲間にした動物は同時に2匹まで装備可能で、剣とばしの飛距離が伸びたり、移動速度が飛躍的に向上したり、氷や炎の魔法を付与したりなど、冒険に役立つ様々な特殊効果が得られる。また、動物の組み合わせ次第で新たなアクションを編み出す楽しみもある。一見すると王道な冒険譚に見えるが、創世記と銘打つだけあってシナリオには捻りがあり、人と動物とモンスターのそれぞれに事情があったり、過去と現在を行き来したりする展開が存在する。オーソドックスな遊び心地とユニークな世界観が印象的な意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは篠田元一氏。CMやイベントなど様々なメディアで楽曲提供をおこなっている作編曲家である。ゲーム関連だとアレンジアルバムなどでの参加経験はあるが、本作のように一から担当するのは珍しい。また、サウンドオペレーターとして岩垂徳行氏が携わっていて、数曲ほど本作にて作曲しているようである。本作では明るくカラッとしたポップなサウンドから、特に物語後半にかけてはシリアスで神秘的な雰囲気を帯びたもの、戦闘曲となればかなり激しくハードロック寄りなものまで、場面ごとに多彩な楽曲が用意されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

セイントヘヴンで流れるのがこの曲である。セイントヘヴンは空に浮かぶ聖域であり、物語の転機ともなる重要なイベントを迎える場所である。また、神聖な場所という繋がりで、セイントヘヴンの他にも故郷のソレイユの街の教会でも流れる。そうしたなか、この曲は終始一貫して聖歌のようなメロウな響きを帯びている。パイプオルガン特有の深く広がるような豊かな音色が非常に耳に残り、一瞬にして安らかで物悲しくて荘厳なムードを形作る。冒頭で低めの音域でフレーズを奏でた後に、16秒からオクターブを上げて高音域に遷移することで、ますます悲壮な雰囲気が強まる。33秒ですこし流れが変わり、穏やかだけどどこか不穏な印象も見え隠れする、不思議と引き込まれるような聴き心地を生み出す。粛々と畏怖を抱かせる一曲である。

よく反響する空間でパイプオルガンの生演奏で聴いてみたいですね。さぞ聴き応えがあることでしょう。