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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1441 『Coral Reef -Epipelagic-』(青島主税/深世海 Into the Depths/iOS)

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カプコンがおくる潜水探検アクション・深世海より、

青島主税作曲、『Coral Reef -Epipelagic-』。エリア「故郷」で流れます。

カプコン製のApple Arcade向けの作品として登場した本作。地表が氷に覆われ、海中さえも浸食され続ける崩壊の世海を舞台に、ただ一人彷徨う潜海者の主人公は、偶然出会った未知の機械・潜導に導かれて深い海の底へ、生存者の捜索と崩壊の謎を追って冒険することになる。海中探検に焦点を当てたメトロイドヴァニア型の2Dアクションアドベンチャーで、海中ならではの浮遊感はもちろん、酸素の管理や水圧の概念、資源の発掘といった特徴的な要素が揃っている。酸素ボンベの状態と敵の襲撃に注意しながら各地で資源を集め、それをもとに潜水服や装備を強化し、奥を目指して進む、というのが主な流れである。酸素ボンベの残量は時間経過に加え、被弾や高所からの落下など様々な要因で減少するため、なるべく温存できるよう立ち回る必要がある。それと同時に、あえて酸素を放出することで一時的に高速移動することもできるため、温存と消費のバランスを見極めるリソース管理が肝となる。自機の攻撃手段はギャフや銛で、戦う敵は水棲と機械が入り混じった独自のデザインで、作風は全体的に言葉少なで雰囲気で伝えるスタイルを取っているなど、世界観を強く押し出したロマンあふれる仕上がりとなっている。後にスイッチに移植された(現在Apple Arcade版は配信終了済み)。

本作の音楽を担当するのは青島主税氏。ベルリン在住のドラマーで、主にアーティストとのコラボや公演、レコーディングなどの分野で活躍している。ゲーム音楽に関しては本作が初担当で、既存の枠に囚われない気鋭のサウンドを書き下ろしている。ピアノや電子音、パーカッション、ときにはクワイアをも巧みに散りばめたミニマル×アンビエント×プログレッシブ系の楽曲を中心に、音を録る際には深海らしい響きを追求すべく水槽やバスタブに沈めて収録したとのことである。そのため、ややくぐもったようなローファイ感やグリッチ感があり、それが作品全体の臨場感をぐっと高めている。サウンドトラックについては、主題歌や一部の楽曲を除いて収録された通常バージョンと、未収録だったものを集めたバージョンが存在する。

エリア「故郷」の浅い海域で流れるのがこの曲である。最初に探検することになるエリアで、ところどころ氷に浸食された珊瑚礁が広がる。はじめは環境音メインで静けさに包まれているが、すこしずつテンションを蓄えていって13秒頃かられっきとしたメロディーを奏でるようになる。シンプルなフレーズを繰り返すうちに徐々にピアノとドラムが目立ち出し、さらにそこに畳みかけるように34秒から遠巻きにピアノの高音が聴こえ始める。水中で光が反射して独特な輝きをもたらすかのように、ピアノが紡ぐ音色は絶妙な煌めきと透明感を帯びていて、とても綺麗で聴き心地の良い雰囲気を生み出する。ピアノの他には58秒頃や1分31秒頃から木琴のような音色に見せ場が与えられる点が印象的である。特に1分37秒以降の間奏は耳に優しい素朴な癒しに満ちている。初めて海を探検して見るものすべてに魅了される、その新鮮な歓びを見事に捉えた一曲である。

エリア内で先に進むとアレンジが変わって、『Coral Reef -Mesopelagic-』『Coral Reef -Bathypelagic-』がそれぞれ流れます。曲名の副題、ハイフンに囲まれている英単語は海洋用語で海の層の区分で、順に「表海水層」「中深層」「漸深層」を意味するようです。あわせてどうぞ。

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