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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1459 『スタッフロール』(中馬淳・冨田朋也/F-1 SENSATION/FC)

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コナミがおくるレースゲーム・F-1 SENSATIONより、

中馬淳・冨田朋也作曲、『スタッフロール』(仮称)。スタッフロールで流れます。

F-1を題材にしたファミコン末期の作品にあたる本作。プレイヤーは新人のF-1ドライバーとなってワールドチャンピオンを目指すことになる。当時の競技団体と権利保有者とライセンス契約した本格志向のレースゲームで、チームもライバル選手もコースも本作の発売時(90年代初期)に実在した実名で登場する点が大きな魅力である。好きなコースを選んで遊ぶFREE RUNと、世界各地を転戦してパスワードコンティニュー式で全16試合を勝ち抜くGRAND PRIXの2種類のモードが収録されている。マシンは4種類、換装できるパーツは7箇所も用意されているため、カスタマイズ機能が充実している。カスタイマイズを通じてトップスピードや加速性能、コーナリング性能などが左右される。実際のレースパートは疑似3Dで表現されていて、車を走らせるうちにタイヤが摩耗したり、ピットインして修理や交換をしたりする要素が含まれるなど、現実感のある仕様が多く取り入れられている。細かなつくり込みで当時のF-1界が再現された仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは中馬淳氏と冨田朋也氏。いずれも当時コナミに所属していた作曲家である。本作はコナミファミコン向けに発売した最後のオリジナル作品ということもあって、サウンド面でも円熟したつくり込みが窺える。レース曲は4つあるなかから任意に選ぶ形式で、いずれも長めの尺で飽きの来ない工夫が凝らされている。アップテンポでリズミカルでメリハリ豊かな楽曲で存分にレースを楽しむことができる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

スタッフロールで流れるのがこの曲である。グランプリ優勝後、各レースのリザルトを振り返りながら感慨に耽る状況にぴったり寄り添うような曲調が特徴である。イントロの10秒間はまばらなビートでゆったり始動し、やがてメインメロディーが入る頃になると粋なリズムを刻みながらじんわりと盛り上げる。まるでバラードのようなマイルドでセンチメンタルな雰囲気が漂っていて、エンディングらしい労わりと慈しみに満ちている。32秒からは一転して高音を利かせて明るく前向きな印象を帯びるようになるが、しばらくして53秒で収束し出すと再び元の調子に戻り、最後は静かに締め括る。達成感とともに一抹の寂しさが残る一曲である。

ああ、終わったんだな、と心から感じ入ることのできる曲ですね。とても良いものです。