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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1552 『ロココ町』(依田彰子/スラップスティック/SFC)

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クインテットがおくるRPGスラップスティックより、

依田彰子作曲、『ロココ町』(仮称)。ロココ町で流れます。

ソウル三部作で知られるクインテット製のスーファミ後期の作品にあたる本作。宇宙のどこかにある極楽星を舞台に、ロココ町に引っ越してきた発明家志望の少年は、ハッカーを名乗る悪の軍団に対抗すべく、自作のロボットで戦うことになる。コミカルな世界観のもと、自由度の高い発明とカスタマイズ要素が特徴的なRPGである。主人公自身は戦わないが、ロボットを作成し、自分好みにステータスを割り振り、技のパターンを登録することで、代わりに戦わせることができる。装備やアイテムも自作するスタイルで、発明のアイデアは町で人の話を聞いたり本棚を読み漁ったりして入手していく。戦闘はサイドビューのコマンド制で、マス目移動や出撃ユニットの交代などシミュレーション風のシステムが取り入れられている。物語やキャラ造形は剽軽だが、SF冒険譚らしいスケール感があって適度なメリハリがついている。総じて一風変わったシステムで丁寧にまとめられた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは依田彰子氏。ゲーム音楽の担当例は限られるが、本作以前にはPC98のGAGEで作曲したことがある。同作は本作同様、開発に株式会社エインシャント(古代祐三氏が代表を務めるゲーム・音楽制作会社)が関わっていて、古代氏は本作のサウンドプロデューサーを担っている。本作ではスーファミの柔らかく奥深い音源を駆使し、瑞々しく彩り豊かなサウンドを作り上げている。オルゴールやオルガン、オーケストラヒットなど独自の存在感を放つ音色をうまく散りばめている。全体的には陽気な印象があるが、しんみりと郷愁を誘うもの、物々しくシリアスなものなど、場面ごとに異なる聴き心地のある楽曲が用意されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

ロココ町で流れるのがこの曲である。主人公の住む小さな町で、白亜の建物に紅葉の木々が並ぶ質素で美しい景観が印象的である。そうした町並みに寄り添うように、出だしから出し惜しみせず笛やギター、バイオリンが上品で軽妙なワルツを披露する。6秒からバイオリンを主役に据えて伸び伸びと活き活きと演奏し出すと、ルンルン気分でスキップしたくなるような素朴な喜びを感じさせる。その響きは町名が示すように、ある種ロココ音楽に通ずるような優雅で軽快な印象がある。18~21秒で手際よく綺麗にフレーズを締めると、まもなくループに入って頭から再始動する。平和で風情あふれる町にぴったりな一曲である。

読みは「ロココちょう」です。始まりの町でも故郷ならのんびりしんみり系の曲が似合うかもしれませんが、引っ越してきた新しい町なのでこれくらい華やかなほうがいいですね。