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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1551 『Center City Cenote』(Melos Han-Tani/Anodyne 2: Return to Dust/PC)

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Analgesic Productionsがおくるアクションアドベンチャー・Anodyneより、

Melos Han-Tani作曲、2の『Center City Cenote』。同名の街で流れます。

アメリカの二人組インディースタジオ・Analgesic Productionsのデビュー作であるAnodyneの2作目にあたる本作。人々の心を蝕むナノダストが蔓延するNew Thelandを舞台に、ナノクリーナーの主人公・Novaは、心に入り込んでダストを掃除すべく奔走することになる。あえて初代PS風のローポリゴンで描かれたフィールドを探索する3Dパートと、レトロな見下ろし型アクションで表現された心象世界を探索する2Dパートに分かれている。前作は全編が2Dパートで構成されていたが、本作では表現の幅が広がり、本作単体でも楽しめる独立した物語が描かれている。アクションアドベンチャーと一口に言っても戦闘要素はほとんどなく、謎解きしつつ雰囲気に浸ることがゲーム性の肝となる。詩的で曰くありげな、それでいてときに無性にどうでもいいような台詞回しで彩られた感傷的な世界観が特徴で、レトロとモダンの狭間にある90年代後期にタイムスリップしそうなニッチな味わいがある。総じて謎めいた安堵感のある仕上がりとなっている。後にスイッチ、PS4、PS5、Xbox One、X|Sに移植された。

本作の音楽を担当するのはMelos Han-Tani氏。二人組で活動するAnalgesic Productionsの片割れであり、アジア系とアイルランド系のルーツを持つアメリカ人である。ゲーム制作においてアート以外を手がけるマルチクリエイターで、作曲に加えて企画、プログラミング、営業などを担当している。本作では氏がほぼ全曲を作曲しているが、ゲストでEquip(Kevin Hein)氏とR23X(Marc Junker)氏が1曲ずつ書き下ろしている。曲数が多く用意されているなかで一部は前作からのアレンジだったり、過去のインディー作品からの引用や流用だったりするようである。本作ではシンセパッドやシンセベルなどを多用し、サンプリング音源を取り入れたアンビエントやエレクトロニック系の抽象的なサウンドが取り揃えられている。基本的には主張がすくなく穏やかだが、ふとした瞬間に美しさが垣間見えるような独特な曲調を堪能することができる。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されているほか、レコード盤やカセットも存在する。

Center City Cenoteで流れるのがこの曲である。New Thelandの中心地であり、本作の拠点となる街である。都会的だが変わった造形の建物が目立ち、不思議なノスタルジーを醸している。そうしたなか、まずはシンセパッドを敷いてゆらゆらと揺蕩うような空気感を形成する。11秒から入るメインメロディーは笛と木琴の合いの子のような響きを持つ。旋律そのものは瑞々しくチャーミングだが、伴奏のパッドを中心に音色が長く持続したり残響したりすることで、全体的な曲調はダウナー感があって瞑想するような趣がある。36秒あたりから勢いづくが、相変わらずゆったり聴き浸れるムードを保っている。時折39~41秒、44~46秒などでさざ波のような環境音が入るが、厳密には自然の音ではなくザーッと響くホワイトノイズが用いられている。曲が進むにつれて、たとえば1分12秒で煌びやかな効果音が聴こえたり、2分12秒以降で一見すでに聴き覚えがありそうだが以前と異なる調べを奏でたりして、細かな工夫を散らしている。ちょうど3分頃から聴こえるフレーズは印象深く、柔らかく滑らかな後味を残す。心の隙間に染み込む気持ち良さがある一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。英語ですがこの曲ピンポイントで扱っている作曲者ご本人の解説動画があり、45分間たっぷり大変参考になるので興味がある方はぜひご覧ください。

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