タイトーがおくる縦スクロールシューティング・レイストームより、
TAMAYO作曲、CLAIRE歌唱、PS版の『CERAMIC HEART』。
エクストラモードのエンディングで流れます。
圧巻の3Dポリゴン描写が魅力的な同名のアーケード作品のPS移植にあたる本作。人類が宇宙開拓を推し進めてから100年以上経ち、衛星セシリアを中心として植民惑星連合が地球に対し武装蜂起したことを受け、セシリアより流出したオーバーテクノロジーを応用した13機の最新鋭機・R-GRAYが制圧のため出撃することになる。アーケード版原作とほとんど遜色なく高い再現度で移植されていて、美麗な映像表現や戦略的なゲーム性は健在である。移植に際して通常のアーケードモードのほか、ステージ構成や敵配置、攻撃パターン、エンディングなどを刷新したエクストラモードが収録されている。また、原作では設定上は13機でも実際に選べる自機は2種類だったが、移植では既存2種類に対しマニュアル・オートで3機ずつの残機＋新機体、3×2×2+1で挑む13機モードが追加された。総じて追加要素の充実ぶりとも相まって上質に再構築された仕上がりとなっている。後にPS3とXbox 360向けにHDリマスター版が登場した。
本作の音楽を担当するのはTAMAYOこと河本圭代氏。当時タイトーのサウンドチーム・ZUNTATAに所属していた作曲家である。アーケード版原作の作曲はもちろん、本作のエクストラモードではTANZ MIXと称して全面的にセルフアレンジをおこなっている。幻想的かつ鋭利なテクノやハウス調の原曲に対し、広義のダンスミュージック風のフレーバーが添えられている（TANZはドイツ語で「ダンス」の意味）。なかにはフランスの女性シンガー・CLAIRE氏によるボーカル入りのものもある。サウンドトラックについてはTANZ MIXのフル尺版にあたるNEU TANZ MIXというアルバムや、歴代シリーズサウンドをまとめたコレクション盤があるが、本作そのものは音源化されていない。
エクストラモードのエンディングで流れるのがこの曲である。エンディングではレポート形式で事実上の終戦が綴られるが、その内容は端的に言えばセシリアを滅亡させたと語るもので、犠牲者は数十億にも上る。だがこの曲はそうした在り様とは一見、不釣り合いに思えるほど瀟洒でちょっぴりエモーショナルなフレンチテクノポップに仕上がっている。原曲はアーケード版にもあった同名のピアノインストゥルメンタルの楽曲で、しっとり上品で慈しむような響きがある原曲と比べると、こちらも上品さは受け継いでいるものの裏拍を駆使して躍動感が増している。27秒あたりではスウィートな歌声の裏でアコーディオンと思しき伴奏を添えたり、32秒には無線音声のように何事かをつぶやいたりしている点が印象深い。サビに入ると52～54秒でスチールパンを鳴らして陽気な彩りを加え、一通り歌い終えたあとには1分6秒から即興風の演奏を披露して最後まで素敵なムードを貫く。聴けば聴くほど不釣り合いなのではなく、喪失感のある締め方に対して不思議と釣り合う親和性が感じられる一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。フル尺のNEU TANZ MIXは歌の心地良さもそうですが、間奏部分の雑多な音色や全体のリズム感が染みますね。フル版と原曲、あわせてどうぞ。
