VGM格納庫

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#1675 『タイトル』(天岸真志/三国志II 覇王の大陸/FC)

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ナムコがおくるシミュレーション・三国志より、

天岸真志作曲、2の『タイトル』(仮称)。タイトル画面で流れます。

上記動画の49秒まで。

三国志演義を題材にしたナムコ製のシミュレーションの第2弾にあたる本作。後漢末期、黄巾の蜂起を皮切りに戦乱が加速化する時代を舞台に、7人の君主から一人を選んで中国大陸の統一を目指すことになる。前作は西暦200年開始で性格診断を通じて君主が選択される仕組みだったが、本作では遡って董卓が台頭する189年開始になり、直接プレイヤーが君主を決められる任意選択制になった。君主は前作6人のうち5人続投、孫権が前任の孫策に変更、新たに董卓が追加されていて、武将には呂布をはじめとする知名度の高いキャラから三国末期に至るまで数多くの人物が登場する。内政やリアルタイムストラテジー的な戦闘システムは概ね前作通りだが、外交政策に役立つ同盟や離間などの策略、武将のレベルや寿命、出陣の際や戦争中の生命線となる兵糧など、様々な概念が追加された。また、災害の発生と防災コマンドの導入、陣形の追加や変更など、各要素に深みを持たせつつ複雑すぎないバランスで調整されている。アニメーションの多様さや顔グラフィックの充実などグラフィック面でも注力していて、前作を踏襲しつつ順当に拡張した仕上がりとなっている。後にPSにナムコアンソロジーの一環としてアレンジ移植された。

本作の音楽を担当するのは天岸真志氏。スタッフロールでは「あまにし ばんじろう」名義でクレジットされているが、これは氏の数ある変名義の一つのようである。当時、本作の開発元であるトーセに所属していた作曲家で、氏にとって本作はデビューして間もない初期の担当作である。前作は作曲者が不明だが、すくなくともキャリア開始時期を鑑みれば氏とは別人であることが分かる。本作はファミコン末期の作品であり、拡張音源チップを搭載した重厚な音色づくりが特徴的である。中華の鮮やかさと乱世の激しさを見事に表現した非常に胆力のあるサウンドが揃っている。標準のファミコンサウンドの域を超える発音の豊かさと、後継のスーファミサウンドにはない絶妙なレトロ加減が融合している。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。静かにきめ細やかにざわめく音色に続いて、さながら笙の倍音を連想させる極上の響きを添えながら機運を高めていく。5秒には破裂するように激しく銅鑼を打ち鳴らし、中低音域を軸として独自のうねりと節回しをみせながら巧みな調べを紡ぐ。14~24秒でまるで龍が天高く雄飛するかのように、笛とも弦とも取れる麗らかな高音を目一杯響かせると、以降は華やかさを帯びつつも安定したペースで進んでいく。主旋律を担う高音の表現力が目立つなかでも、伴奏の低音や打楽器の厚みもまた十二分な凄みがあり、曲全体を盤石に支えている。ラストフレーズの43秒頃から一際重厚な打音を披露するさまは傑出した迫力がある。威勢赫々たる一曲である。

ナムコアンソロジー版はPS音源アレンジになっていて、原曲にある音源の底力みたいなものは控えめですが、中華オーケストラ風の淑やかな風格がありますね。あわせてどうぞ。

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