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#1076 『滅びた町』(なるけみちこ/ワイルドアームズ アルターコード:F/PS2)

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ディアビジョンがおくる荒野と口笛のRPGワイルドアームズより、

なるけみちこ作・編曲、アルターコードFの『滅びた町』。

初代の『破壊と喧騒のあとで』のアレンジで、崩壊後のセントセントールなどで流れます。

西部劇風の世界観が特徴のワイルドアームズシリーズのうち、初代のリメイクにあたる本作。緑が失われて徐々に荒野と化していく世界・ファルガイアを舞台に、荒野を旅する渡り鳥である少年・ロディは、魔族の脅威に対抗すべく仲間とともに冒険することになる。大まかなシナリオやキャラ、世界観は初代を踏襲しているが、台詞回しやシステムなどが細部に至るまで再構築されている。仲間キャラの増加、戦闘ボイスの追加、マップ構造の変更とそれに伴うギミックの刷新といった新規要素のみならず、装備の概念がなくなるなど、初代から削除された要素も存在する。グラフィックの変化も相まって、純粋なリメイクとは一味違う意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはなるけみちこ氏。ワイルドアームズシリーズではおなじみのフリーランスの作曲家である。初代でも作曲していて、本作では初代のアレンジはもちろん、新曲も充実している。アレンジについては、楽器やパートを追加したり全体的な温度感を調整したりするなど、原曲の雰囲気を尊重しつつもだいぶ代わり映えする編曲が施されている。サウンドトラックは主題歌も含めて4枚組で収録されている。

崩壊後のセントセントールなどで流れるのがこの曲である。魔物の侵入を防ぐ強力な結界に覆われた町で、崩壊前は汎用の町曲である『町並み』が流れるが、壊滅的な被害を受けて廃墟化した後はこの曲に切り替わる。初代の『破壊と喧騒のあとで』のアレンジで、旋律や曲調は概ね共通しているが、楽器構成を入れ替えてより張り詰めた空気感を生み出している。煌びやかで綺麗だが哀しみを帯びた鉄琴のフレーズに、小刻みに震える繊細なストリングス、そして透き通るような口笛のメロディーが重なることで、心に染みる寂寥感を漂わせる。30秒手前でオーケストラの分厚い重低音が響くと、ただ寂しいだけに留まらぬ痛ましさを感じさせ、惨状を強く印象付ける。47秒頃の哀愁漂うギターや、1分7秒~17秒頃のくぐもったラジオを連想させるような独特な響きなど、趣向を凝らして退廃的なムードを演出している。滅びの様子をありありと感じ取れる一曲である。

原曲もとても味のある良曲ですが、このアレンジの秀逸さは驚異的ですね。崩壊前の『町並み』と初代の『破壊と喧騒のあとで』、あわせてどうぞ。

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