VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1079 『The ends of the eternal snow』(佐宗綾子/鉄拳レボリューション/PS3)

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バンダイナムコがおくる対戦格闘・鉄拳より、

佐宗綾子作曲、レボリューションの『The ends of the eternal snow』。

Winter Palaceで流れます。

個性派揃いのキャラと直感的な操作が特徴の鉄拳シリーズの外伝作で、基本プレイ無料のダウンロード専用タイトルとして登場した本作。配信当初はデフォルト8人+解禁4人、最終的には計29人のなかからキャラを選んで対戦することになる。オンライン対戦が楽しめる対戦モードと一人でCPU戦をこなすアーケードモードの二つのモードが収録されていて、一定時間でストックが充填されるコイン(≒スタミナ)を消費することで各モードに挑戦できる。課金要素はコインの購入、キャラの解禁(無課金でも地道に解禁できる)、コスチュームの追加などで、特に課金で入手したコインは勝負に負けない限り消費されない良心的な仕組みである。対戦面の特徴として、2種類の強力な必殺技が搭載されているほか、全体的にコマンド入力のしやすさを重視した調整が施されている。また、ステータスを強化できるRPG的な成長システムが含まれる。実験的な内容ながら長く遊べる仕上がりとなっている(現在はサービス終了済み)。

本作の音楽を担当するのは井上拓氏、大久保博氏、川田宏行氏、小林啓樹氏、佐宗綾子氏、佐野電磁氏、濱本理央氏、細江慎治氏、三宅優氏、矢野義人氏。細江氏と佐宗氏は元ナムコで音楽制作会社スーパースィープ所属の作曲家で、佐野氏は元ナムコで音楽制作関連会社DETUNEの代表、三宅氏は元バンナムフリーランスの作曲家である。井上氏、川田氏、小林氏は当時、大久保氏と濱本氏は現在もバンナムに所属する作曲家である。いずれも鉄拳シリーズではおなじみの顔ぶれで、システムBGM全般を手がけている井上氏以外はだいたい1曲ずつの楽曲提供に留まっている。本作では濱本氏が演奏を務めるギターの生音を取り入れるなどして独自色を出しつつ、クラブやドラムンベース系のシャープなサウンドを中心にまとめている。サウンドトラックは2枚組で収録されている。

Winter Palaceのステージで流れるのがこの曲である。5DRやTT2でも登場した氷の宮殿で、その厳かな見た目にふさわしい威圧感を醸し出すにあたって、この曲はアップビートなダブステップ系のサウンドに仕上がっている。シャラシャラと鳴るハープシコードに歪みの効いた電子音が重なり合う独特なイントロで始まり、13秒で一気にダンサブルな曲調へと変わると、圧倒的な勢いをしばらく保ち続ける。1分6秒で一旦おさまると、再び冒頭で聴き覚えのあるハープシコードのきめ細やかな音色と重めのリズムが響き合い、並々ならぬ焦燥感を生む。特筆すべきは1分26秒からのハープシコードソロで、今までのモダンな電子音楽調から一転、優雅で気品に満ちたクラシカルな雰囲気を漂わせる。1分40秒で歪みを取り戻し、続く1分53秒でシンセと再合流すると、徐々にクラシカルな印象は薄れてキャッチーさを蓄えていく。2分20秒でようやく最高潮に達すると、今までになく爽快で開放的なノリを披露する。激しい昂揚感に酔い痴れることのできる一曲である。

歪みを孕みつつ、ストレートに格好良いところもあって、とても心地良いです。