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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1184 『聖域・守』(Ujico*/黄昏ニ眠ル街/PC)

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Orbital Expressがおくる3D探索アドベンチャー・黄昏ニ眠ル街より、

Ujico*作曲、『聖域・守』。神木の聖域1および2で流れます。

フリーのイラストレーター兼デザイナーのnocras氏による個人開発作品にあたる本作。飛行船の故障により異国の地に流れ着いた少女・ユクモは、飛行船の修理に必要な大地の源を集めるべく、黄昏の霧に覆われた街を探索することになる。オリエンタルでファンタジックなビジュアルが最大の特徴で、東洋風の建築物、提灯や灯篭、桜など、非常に美しく雰囲気満点の世界観を楽しめる。大地の源は、茂みに隠れていたり建物の上にあったり、住民のお願いに応えると出現したりするなど、街中の至るところに散らばっている。街のほかに、各マップには神木の聖域と呼ばれる試練エリアがあり、ジャンプや滞空などのアクションを駆使して、アスレチックとパズル要素のある試練を攻略していく。アクションは滑るような独特な慣性が働くため、思い通りの挙動になりにくい面があるが、救済要素として作中のお金を使えば試練をスキップできる仕組みが搭載されている。全体的にギミックの使い回しが多く、ゲーム性は代わり映えしないが、異国を彷徨う旅情気分をたっぷり堪能できる意欲作に仕上がっている。後にスイッチとPS4に移植された。

本作の音楽を担当するのはUjico*氏。Snail's House名義でも知られるフリーのサウンドクリエイターで、主にネット上で活躍する気鋭のアーティストである。作曲ジャンルはフューチャーベース(特に氏が提唱したKawaii Future Bass)を中心に、電子音楽全般を得意としている。本作のサウンドはビジュアルと並んで大きな目玉要素で、一般的に連想するような、オリエンタルなら和風や中華、ファンタジーならオーケストラ、というイメージに必ずしも囚われない斬新な楽曲が揃っている。具体的には、ピアノを印象的に用いつつ、全体として耳心地が良くエモーショナルなエレクトロニックサウンドに仕立てられている。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されているほか、パッケージ版の初回限定特典として付属された。

神木の聖域1と神木の聖域2で流れるのがこの曲である。曲名の「・守」は守破離の守で、聖域3・4は『聖域・破』、聖域5・6は『聖域・離』という別曲が用いられる。序盤に挑戦する試練を彩るにあたって、冒頭から歯切れ良く響くピアノを用いて一気に心奪われるような没入感を生む。7秒からは軽快なビートが、15秒からはクワイアとともに分厚い電子音が加わることで、リズミカルかつエレクトロニックな色合いを増していく。躍動感のある曲調だが、特別明るいわけではなく、むしろ感情を抑えたような淡泊な響きを帯びている。特に45秒頃や1分46秒頃でみられる木琴ソロではその傾向が顕著で、活き活きと跳ね回っているのにどこか無機質な印象を与える。アスレチック要素の強い試練ならではの軽やかさと、聖域ならではのミステリアスさがうまくブレンドした一曲である。

とても良いですね。音楽の良さが攻略のモチベーションになります。話に挙がった『聖域・破』と『聖域・離』もあわせてどうぞ。

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