VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1186 『ステージ2-2』(前川征克/ジャッキーチェン/FC)

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ナウプロダクションがおくるアクション・ジャッキーチェンより、

前川征克作曲、『ステージ2-2』(仮称)。2-2面などで流れます。

アクションスターのジャッキー・チェンを題材とするゲーム化作品のうち、PCエンジン向けに発売されたものの移植にあたる本作。悪の妖術師・無常童子にさらわれた恋人の明鈴を救うべく、ジャッキーは旅立つことになる。全5面から成るライフ制の横スクロールアクションで、PCE版と構成が異なるものの、ステージによって複数のエリアが存在する。操作は移動・攻撃・ジャンプの主に3種類で、道中のカエルを蹴ることで得られる技玉を使えば回し蹴りをはじめとする必殺技を放つこともできる。ステージは溶岩や急流など、王道だがバラエティ豊かなラインナップが揃っている。鈴に触れると突入できるボーナス面では、雲から雲へ飛び移ったり、上から降ってくる玉が床のブロックに着くのを阻止したりするなど、PCE版とやや異なるミニゲームが用意されている。ハード性能の違いがあるなかで、PCE版と比べてグラフィックは良好な水準で再現されていて、細かな仕草に至るまでよく描かれている。オーソドックスなアクションとして手堅くまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは前川征克氏。当時ナウプロダクションに所属していた作曲家で、スタッフロール上ではSHINKON KIYOSHIという名義でクレジットされている。PCE版原曲はもちろん、移植に際しての編曲も手がけている。本作ではPCE版から楽曲がいくつか削られているが、元々アップテンポでメロディアスな良曲揃いだったものを、うまくファミコン音源に落とし込むことに成功している。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

滑る氷床がある2-2面や、雪山を征く4-2面で流れるのがこの曲である。シリアスな響きを帯びた高音で始まり、その下で低音の伴奏が音階を上ってはまた戻ってを繰り返すことで、切迫としつつも慎重に足場を固めて進んでいく感覚を印象付ける。13秒からは主旋律が中低音域に移り、高音のイントロが醸していた緊張感とはまた違った引き締まった空気を漂わせる。PCE版原曲のざわついたような聴き心地と比較すると、音源の違いによりFC版はだいぶ素朴で丸みがあるが、それがかえってメロディーの秀逸さを引き立てているかのようである。特に38秒で細かい間隔で短音を奏でながらパーカッションを折よく鳴らすパートでは、PCE版の重厚な音源よりもFC版のほうが軽めに聴こえるからなのか、原曲以上に明るく溌溂とした印象を与える。危険な道のりを果敢に進む様子を彩るにふさわしいスリルとエネルギーに満ちた一曲である。

FC版の高音の響きが好きですが、PCE版原曲も格好良いですね。あわせてどうぞ。

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