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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1264 『W-P.NEURONS』(アサノハヤト/BLUE REFLECTION TIE/帝/NS・PS4)

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ガストがおくるヒロイックRPG・ブルーリフレクションより、

アサノハヤト作曲、TIE/帝の『W-P.NEURONS』。前半の通常戦闘で流れます。

女子高生の青春を描くブルリフシリーズの家庭用機向け第2弾にあたる本作。ある夏、空間ごと切り取られたかのように水面に浮かぶ校舎を舞台に、別世界から迷い込んだ主人公・星崎愛央は、そこで暮らす記憶喪失の少女たちと交流するうち、魔法少女・リフレクターに変身する力に目覚め、記憶と世界の謎に迫ることになる。前作やアニメ版(RAY/澪)の内容とキャラを踏まえたうえでの続編だが、ほとんどの登場人物が記憶喪失のため、物語が進むにつれて世界観やキャラ同士の相関関係が判明・掘り下げられていく形式を取っている。全11章構成で、主に校舎で少女たちと触れ合う生活パートと、記憶にまつわる心象空間・ココロトープを冒険する探索パートがある。前者は料理や工作に加え、屋台やぬいぐるみといった小道具を設置して学校を魔改造する要素があり、設置物に関連するヒロインとの会話を楽しんだり、デートに誘ったりすることができる。後者は少女たちの記憶を紐解く傍ら、戦闘の際は前衛3人+支援1人でコマンド式・半リアルタイム進行で戦う。総じて前作の小綺麗さを受け継ぎつつ、シナリオ面ではさらに一歩踏み込んだ少女たちの関係性を描き、システム面では遊びの幅が拡張された仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのはアサノハヤト氏。かつてガストに在籍していた経験のあるフリーランスの作曲家で、前作に引き続き単独で作曲している。ガスト在籍時代(前作は在籍時代の最後の担当作品である)は漢字表記の浅野隼人名義を用いていたが、本作ではフリー転向後ということでカタカナ名義を用いているようである。本作では水上の校舎をはじめ、片田舎や駅のホーム、鳥居など、異世界なのにどこかノスタルジーを誘う原風景が散りばめられている。そうした画作りに沿うように、ピアノやバイオリン等の聴きやすい生音のなかにデジタルなエフェクトやグリッチを融け込ませた、EDMやアートコア系のきらりと眩いサウンドが取り揃えられている。また、前作からのアレンジや流用曲も存在する。サウンドトラックは主題歌含め3枚組で収録されている。

前半(7章まで)の通常戦闘で流れるのがこの曲である。冒頭の第一音から非常に快く伸びるバイオリンの高音が印象的で、清涼感たっぷりに響く旋律のバックにはピアノと電子音が隙間なく敷き詰められている。一通りバイオリンが優雅な演奏を披露した後、24秒からドラムビートが勢いづき、電子音楽らしい色合いがうんと強まる。30秒過ぎからすこしくぐもったような響きを帯び、ピアノとストリングスにそれぞれ順を追って見せ場が与えられる。1分3秒でサビを迎えると、くぐもった響きが解除されて一気にエネルギーを発散させる。イントロの第一印象ではバイオリンが主役と思わせておいて、あえてサビではピアノがリードを取ることで、聴いているうちに自然と音の波に呑まれるような心地良い感触を味わえる。この感触はサビが過ぎても持続し、1分半頃には再び顕著に電子的な雰囲気が強まっている。心に染み渡って神経が研ぎ澄まされるような気持ち良さを感じられる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。曲名のNEURONSは神経細胞のことですが、W-P.というのは何の略でしょうね? 水のモチーフからの連想でwater-permeable(透水性)とか、学術用語寄りで考えるならリフレクターとしての目覚めと絡めてwake-promoting(覚醒促進)とかかな?