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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1282 『Alarming Swamp』(Jukio Kallio/Minit/PS4・XOne・PC)

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Devolver Digitalがおくるアクションアドベンチャー・Minitより、

Jukio Kallio作曲、『Alarming Swamp』。沼近辺のエリアで流れます。

オランダ出身のゲームクリエイター・Jan Willem Nijman氏とKitty Calis氏、フィンランド出身のサウンドクリエイター・Jukio Kallio氏、ドイツ出身のデザイナー・Dominik Johann氏の四名が共同開発した本作。持ち主を1分おきに死に至らしめる呪いがかかった剣を拾ってしまった主人公は、呪いを解く術を求めて冒険することになる。白黒のドット絵によるレトロなグラフィックが印象的な見下ろし型アクションアドベンチャーで、60秒経つと否応なしにリスポーン地点に戻される点が最大の特徴であり本作のゲーム性の肝である。常に制限時間を意識しながら、目的地へのルートを模索したり、道中の謎解きに挑んだり、人助けをしたり、ときには住民の長話にうっかり付き合わされたりして、何度も生死を繰り返して攻略していく。ボリュームという観点ではコンパクトにまとまっているが、ギミックという観点では程よい焦りと歯応えが感じられ、濃密な1分間を反復することができる。インディーならではの捻りの利いた仕上がりとなっている。後にスイッチやスマホに移植された。

本作の音楽を担当するのはJukio Kallio氏。前述の通り、フィンランド出身のサウンドクリエイターで、フリーランスである。Nijman氏とは本作以前にもLuftrausersやNuclear Thrones(いずれもNijman氏率いる開発会社・Vlambeer製の作品)などで共作経験がある。本作では完全なチップチューンではないが、ところどころレトロな電子音やローファイなエフェクトを取り入れた表現力豊かな楽曲が揃っている。ビジュアルのテイストはゲームボーイに近いが、サウンドは譬えるならばスーファミ時代に近いような、それでいて当時とは異なる現代的な色味がブレンドされている印象がある。曲の尺は1分以内に収められているわけではないため、作中では一度に通しで聴ける設計にはなっていないが、リスポーン時に曲の再生開始地点が微調整されるため、それによって各パートを万遍なく聴くことができる。サウンドトラックは各種デジタルストアで配信されている。

沼の近くで流れるのがこの曲である。ホテル、墓地、幽霊小屋などを含む物語後半のエリアである。サントラ収録音源(上の動画)だと冒頭27秒ほど環境音が続くが、作中で最も頻繁に聴くことになるのはそれ以降の旋律が入ってからのパートである。病みつきになる響きを帯びたチップチューンに、簡素だが味のある音色を奏でるギターや、破裂音に近しいハンドクラップが絡み合い、似通ったフレーズを粘り強く反復することで、耳にこびりついて離れない絶妙な心地良さを感じさせる。1分4秒からはうねうねと蛇行するような音色が入り、ますます沼に嵌まっていく感覚を味わえる。2分4秒では特に、それまで大袈裟なほど力強く響いていたハンドクラップが抜けることで、ギターのフレットノイズ(キュッと擦れる音)が強調されて、得も言われぬ小気味良さをもたらす。2分15秒の美しいギターの見せ場を皮切りに元の勢いを取り戻すが、2分40秒から今度は打楽器とあわせて唸り声のようなものが強調されるようになると、またもや独特な聴き応えを生む。曲のどの部分を切り取っても魂揺さぶる中毒性に満ちた一曲である。

幽霊小屋のなかに入ると曲全体に不気味なエフェクトがかかるんですが、これがまた絶品です。あわせてどうぞ。

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